◎編集者コラム◎ 『うちの宿六が十手持ちですみません』神楽坂 淳
◎編集者コラム◎
『うちの宿六が十手持ちですみません』神楽坂 淳
大正時代を舞台にした、女子野球グルメ小説『大正野球娘。』で、華々しいデビューを飾った神楽坂淳先生。
デビュー作『大正野球娘。』はコミック化、そして、テレビアニメ化も達成という快挙を成し遂げたわけですが、この最新作は大正時代ではなく、江戸時代を舞台としています。
先んじて上梓されたシリーズ、「うちの旦那が甘ちゃんで」「金四郎の妻ですが」は、いずれも同じく江戸を舞台とした時代小説で、もちろん大ヒット、快進撃を続けていますから、本作の面白さは申し上げるまでもないでしょう。
その人気絶頂の先生が小学館時代小説文庫で描く江戸の時代小説は、柳橋で一、二を争う人気の芸者・菊弥と、柳橋を縄張りにしている岡っ引き・北斗との恋愛捕物帳です。
ヒロインの菊弥は、男まさりで気風がよく、「芸は売っても身は売らない」を地でいっている姉御肌。周りの芸者からの信望も厚く、旦那衆からも可愛がられています。
なんとなく完璧に見える彼女ですが、なんと、失点がたったひとつだけあるのです。
それが、「ダメ男好き」という性格。
恋人の北斗は、表向きは芸者の荷物を持ったり、金銭の交渉を受け持ったりする「箱屋」の「外箱」として、菊弥の付き人をしていますが、「自分では」凄腕の岡っ引きと思い込んでいて、しかも、恋人を支えていると勘違いしている「ダメ男」なのです。
事件が起こるたび、解決に奔走しているのか、それとも引っ掻き回しているのか、北斗のダメっぷりにいつも頭が痛くなる菊弥は溜め息ながらに呟きます。
「世間のみなさま、すみません」
可愛さ余って憎さ百倍の北斗ですが、それでも、菊弥は好きで好きでしようがありません。
なんでそんなに、菊弥は北斗が好きなのでしょう。
決して、「ダメ男好き」だから、だけではないのです。
読んでいただければ、必ず分かります。
そんな、ほのぼのお笑い捕物帳の第一弾を、ぜひお楽しみください。
先生お得意のグルメもバッチリ描かれていて、しっかりお腹が減ってしまうはず。
──『うちの宿六が十手持ちですみません』担当者より
『うちの宿六が十手持ちですみません』
神楽坂 淳