◎編集者コラム◎ 『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』一橋文哉

◎編集者コラム◎

『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』一橋文哉


「チクショー」

 午前七時、いつものように独房で目を覚まし、朝食を残さず平らげた約四十分後、刑務官から「出房だ」と促されると、運命を悟ったのか思わず男は叫び声をあげた――。

 

 叫び声の主は、死刑が執り行われた2018年7月6日朝の、オウム真理教元代表・麻原彰晃(本名・松本智津夫)です。

 本書の冒頭には、麻原以外にも、同日死刑執行されたオウム真理教元教団幹部たちの、執行直前の様子が生々しく記述されています。サリン製造に関与した土谷正美は「自分が生まれたのは間違いだった」と泣いて散り、元「諜報省大臣」井上嘉浩は「まずはよし!」と自らに言い聞かせ、元「法皇内庁長官」中川智正は「身体に触れるな! 自分で歩いていく」と語ったといいます。

 なぜ著者はそんな話を細かく知っているのでしょう。

 著者の一橋文哉氏は、全国紙、雑誌記者を経てフリージャーナリストとなり、1995年「ドキュメント『かい人21面相』の正体」で雑誌ジャーナリズム賞を受賞してデビュー。その後、朝日新聞阪神支局襲撃、三億円強奪、イトマン、酒鬼薔薇聖斗、世田谷一家惨殺、和歌山毒カレー、宮﨑勤、尼崎連続変死、餃子の王将社長射殺、山口組分裂、清原和博覚せい剤など多くの重大事件、そして政界、財界にはびこってきたヤクザの生態などを取材し、多くの記事や著書にしてきました。本名等は非公開の〝覆面ジャーナリスト〟です。独自の人脈で培われた取材網は全国に張り巡らされ、足で情報を稼いできたからこそ手に入る、新聞やテレビが報じない独自ネタを書きつづけてきたのです。

 その一橋氏が、上記に挙げたような、これまで関わってきた事件の意外な真相や取材を巡る〝とっておきのここだけの話〟を綴ったものが本書です。昭和から平成、令和にいたる時代や社会、そして重大事件を生んだ世相とその意味について、四十年近く事件取材をつづけてきた〝生涯一事件記者〟の語る言葉には重みがあります。また、ふだんは絶対に語ることのない、スクープの裏側や失敗エピソードは著者の既刊にはない魅力です。

 事件ノンフィクションファンだけでなく、警察小説や、殺人事件を題材とした小説ファンにとっても、存分に楽しめる内容となっています。ぜひ一橋ワールドを堪能してみてください。

──『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』担当者より

もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話

『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』
一橋文哉

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