◎編集者コラム◎ 『汚れなき子』著/ロミー・ハウスマン 訳/長田紫乃

◎編集者コラム◎

『汚れなき子』著/ロミー・ハウスマン 訳/長田紫乃


 ドイツ・アマゾンのレビュー数1756、★平均4.5超!
 米アマゾン、発売7か月でレビュー数3145、★平均4.5超!

※いずれも2021/5/25現在

 欧米で今もリアルタイムで大ヒット中!!
 ドイツ・ミステリの新星ロミー・ハウスマンによるデビュー作、『汚れなき子』(原題 : Liebes Kind)をお届けします。

 

 【イントロダクション】
 真夜中、ひと組の母娘が救急車で病院に搬送された。母親は自動車事故に遭い、重傷を負っていた。母親といっしょにいた少女は幸い無傷だった。母親が救命処置を受けている間、少女は看護師に身元を聞かれるが、少女は母親の名前がレナであること以外は何も明かさない。看護師が電話番号をたずねると少女は言った。
「うちには電話ないの」
「じゃあ、住所だけでも? 住んでる通りの名前、わからない? 誰かを向かわせて、パパを連れてくることができるかも」
 そう看護師が言うと、少女はゆっくりと首を振って囁いた。
「私たち、見つかっちゃいけないんだよ」
 その後、少女が語ったのは、事故の夜、少女の母親がうっかり父親を殺そうとしたこと。小さな弟がひとり今も〈小屋〉に取り残されていること。そして〈小屋〉での異様な暮らしぶりだった――。

 

 本書の特徴は、何といってもその〈語り〉にあります。物語はまず上記の少女、ハナの視点で語られる他に、事故に遭った母親の視点と、もうひとり行方不明の娘を探す父親の視点の三つで描かれていくのですが、やがて少女と母親二人ともがどこか歪んでいることに読者は気づき始めます。

 スリラーですから作品にはもちろん捜査機関は登場します。登場しますが、彼らはあくまでも脇役です。主役はあくまでも〈被害者〉。その被害者の語りから、やがて結末近くになってようやく事件の全貌が見え始めるのですが……。

 

 ところで今回のこの作品、出版に至るまでのいきさつが少し変わっています。作品の存在を知ったのは、ドイツ在住の本書の翻訳家・長田紫乃さんを通してのことでした。

 2014年2月、嶽本野ばらさんの『破産』が舞台化されました。その企画を立ち上げたのが長田さんでした。この舞台から長田さんとのご縁が生まれ、長田さんがドイツに移られてからは、現地で話題の小説を時折紹介していただいておりました。そこで出会ったのがこの作品でした。

 翻訳物の原作との出会いはエージェント(版権代理人)の紹介によるものが多いのですが、現地在住の翻訳者による紹介は担当者には初めてのことでした(日本に住む翻訳家の紹介というのは時々あります)。これほど現地で話題になっているタイトルも、長田さんとの出会いがなければきっと知ることはなかったでしょう。そう思うと、作品のおもしろさともあいまって、感慨を感じます。

 

 装丁をどうしようかと、今回も迷いました。欧米の本はたいてい素っ気なく、国内版は作り込むようにしています。ドイツ版 “Liebes Kind” の装丁は素っ気ないなりになかなかカッコよくて、同じようにしようかと思ったものの、一転してイラストで行くことに決めました。

 装画家は「警部ヴィスティング」シリーズの光嶋フーパイさん。デザイナーの山田満明さんが、その線画に鮮やかな青色をかぶせて大胆な画像を作ってくれました。なにより今回の装丁は、原作者がとても気に入ってくれたとの知らせがあり、幸せでした。

──『汚れなき子』担当者より
  

汚れなき子

『汚れなき子』
著/ロミー・ハウスマン
訳/長田紫乃

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