◎編集者コラム◎ 『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』西村京太郎
◎編集者コラム◎
『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』西村京太郎
1963年のデビュー以来、トラベルミステリーの第一人者として今なお精力的に作家活動を続ける西村京太郎先生。オリジナル著作はなんと600冊を超えるのだそうです! 小学館では3月刊行の単行本『十津川警部 四国土讃線を旅する女と男』、今回の『十津川警部 海の見える駅――愛ある伊予灘線』と四国シリーズの年となりました。
本作の舞台となったのは絶景で知られる愛媛・下灘駅。プラットホームに降り立つと目の前には一面の海が(実は訪れたことがないのですが、数々の写真を見ているうちに行った気に)。ドラマや映画のロケ地としても有名で、鉄道ファンでなくともご存じの方は多いと思います。タイトルにある「愛ある伊予灘線」とは予讃線の伊予市駅 – 伊予大洲駅間の海回り区間に付けられた愛称とのこと。なんともロマンチック。
さて、物語は一人暮らしの老人の失踪から始まります。後日、老人は自宅マンションで遺体となって発見されますが、なぜか死因は「溺死」。その後、生前の父の足跡を追って息子が向かったのがこの下灘駅です。そこで父が死の直前に見たものが明らかになっていくのですが……。本作では、撮り鉄女子との交流などを通して息子が知る父の別の顔、一方で事件を追う十津川と容疑者との緊張感あふれる駆け引き、二つのストーリーをお楽しみいただけます。また、推理小説研究家の山前譲さんには、四国の鉄路と西村作品の歴史を絡めて丁寧に解説いただきました。こちらも必読です。
四国では今年の秋冬に国内最大級の観光キャンペーンを催すのだそうです。紅葉の山間や瀬戸内の海岸線沿いを行く列車の旅、憧れますね。もちろんグルメも……。
四国シリーズで作品世界を楽しんでいただき、状況が許せばぜひ現地を訪れてみてはいかがでしょうか。
──『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』担当者より
『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』
西村京太郎