◎編集者コラム◎ 『閉じ込められた女』著/ラグナル・ヨナソン 訳/吉田 薫

◎編集者コラム◎

『閉じ込められた女』著/ラグナル・ヨナソン 訳/吉田 薫


シリーズ3作、無事完結!  翻訳者の吉田薫さんが送ってくださった写真資料、とても貴重です。

 64歳、定年退職目前の女性警察官フルダ・ヘルマンスドッティルが迎えたラストに、全世界の読者が驚愕した1作目『闇という名の娘』(THE DARKNESS)。

 50歳、母の死をきっかけに父親捜しの旅に出たフルダの寂寞と、孤島に集った若者たちに起きた事件を重ね描いた2作目『喪われた少女』(THE ISLAND)。

 そして本作『閉じ込められた女』(THE MIST)は、シリーズ3部作完結にして、40歳のフルダの物語。ここから彼女のドラマティックな人生が始まったと言える、ある意味、3部作のスタートでもあり、そしてエンディングでもあり。なんてニクい構成!

 ヨナソン作品を担当して6冊目ですが、刊行するごとに実感するのが、「ミステリ読みの人ほど評価が高い!」ということ。先述したような構成、先が気になる展開、さりげなく張られた伏線、そしてアイスランドの風景に重ねて描かれる人々の心情……そういったもののバランスが絶妙で、物語に隠された「何か」を、読めば読むほど読み解きたくなるのが、ミステリファンの心をくすぐるのかもしれません。

 今回、その魅力を解説してくださったのが、作家の阿津川辰海さん。阿津川さんがヨナソン作品を読んでくださっていると知ったのは、Twitterで感想を拝見したのがきっかけ。
 そのツイートがこちら。

【ラグナル・ヨナソンの女性警部フルダシリーズ『闇という名の娘』『喪われた少女』を一気読み! これ、そういう仕掛けのシリーズだったのか! 1作目読後の地獄感に苦しみ、たまらず2作目も手に取りました。謎解きミステリとしては2作目が、物語としては1作目がより好きで、しかし両者傑作だった。】

 この138文字に、2作品の魅力が凝縮されている! と感動した担当は、「本格ミステリ・ベスト10」第1位を受賞したばかりで超絶お忙しいであろう阿津川さんに、ずうずうしくも『閉じ込められた女』の解説をお願いし、そしてご快諾いただいたのでした(ありがとうございます!!)。

 解説のタイトルは「狂おしいまでの、その『叫び』を聴け」。このタイトルだけで震えます。ヨナソン作品は、フルダ・シリーズのほか、新人警察官の奮闘を描いたアリ=ソウル・シリーズも邦訳されていますが、すべての物語に共通する「痛み」「苦味」について、そしてそこから迸る「叫び」について解説してくださっています。

 ついに揃った部作。アメリカでの映像化も進んでいるとか。この人間の本質を震わせる「叫び」が、どのように再現されるのかも楽しみです。快進撃を続けるラグナル・ヨナソンから、ますます目が離せません。

──『閉じ込められた女』担当者より

閉じ込められた女

『閉じ込められた女』
著/ラグナル・ヨナソン
訳/吉田 薫

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