◎編集者コラム◎ 『親子鷹十手日和』小津恭介
◎編集者コラム◎
『親子鷹十手日和』小津恭介
いつの時代でも、家族の物語と言えば、食卓が欠かせません。
この作品の主人公家族は、四人揃ってお膳を囲んでは、「あーでもない、こーでもない」と、同心の息子が持ち帰って来た事件をおかずにして、みんなで食事を楽しんでいます。
時には意見が違って喧嘩もするけれど、それはご愛敬。父と息子が、人情たっぷりに事件を裁くのです。
そのお膳を囲む登場人物をちらっとご紹介いたしますと――
かつて、「詰碁同心」と呼ばれ、町奉行所の定廻り同心として捕物に辣腕を振るった父・谷岡祥兵衛。
若い頃に食いしん坊同士で意気投合、祥兵衛と夫婦になった、能天気な母・紫乃。
馬鹿正直に育ち、融通が利かない息子で、父から同心を継いだ、一人息子の誠四郎。
そして、細やかな心配りができる、美しい嫁の春霞――の四人。
祥兵衛と紫乃は、今では気楽な隠居暮らしの身ですが、料理上手な春霞のご飯を食べたいあまり、ついつい組屋敷にお邪魔してしまいます。
でも、そんなお邪魔から、事件解決の糸口が見えてくるから、あら不思議。
今日も祥兵衛が近所の子たちに書を教えたり、玩具を作ったりしていると、誠四郎が探索の相談にやって来ます。
駒込で旅道具を売る〈笠の屋〉の主人・弥平が殺されたというのです。
框に倒れていた亡骸のお腹に突き立っていたのは、凶器として珍しいと言える剪定鋏。
なのに、盗まれたのは、なんとたったの一両!?
弥平の娘・佐代によれば、いつも袱紗に二十両を包んで、茶箪笥の引き出しに入れていたはずだけれども、十九両が残っているらしくて――。
いったい下手人はどんな人物なのでしょうか? 谷岡家の四人がご飯を食べながら名推理を展開します。
昭和のテレビドラマやコントなどでよく見かけた、家族団らんのお茶の間風景が記憶に蘇り、懐かしい感覚を抱く、食い道楽捕物帖をぜひお楽しみください。
──『親子鷹十手日和』担当者より
『親子鷹十手日和』
小津恭介