伽古屋圭市 ◈ 作家のおすすめどんでん返し 04
1話4ページ、2000字で世界が反転するショートストーリーのアンソロジー『超短編! 大どんでん返し』が売れています。執筆陣が、大ヒットを記念して、どんでん返しを楽しめる映画やアニメ、テレビドラマ、実話怪談など、さまざまな作品を紹介してくださいました! ぜひチェックしてみてください。
作家のおすすめどんでん返し 04
スタァライトしちゃいます!
伽古屋圭市
アニメが好きだ。
小説も好きだがアニメも好きだ。衝撃を受けたどんでん返し小説は枚挙に暇がないが、屈指のアニメ好きとしては(毎季、週十五本近くを見ている)やはりアニメから選びたい。
アニメでもどんでん返しが盛り込まれた作品は数多くあるが、今回全力で推したいのは、こちら。
内容を簡単に説明すると、舞台女優を目指す学園少女たちの群像劇、である。よくある女の子がきゃっきゃうふふするアニメか、と思う勿れ! 描かれる学園生活はけしてきれいごとだけでなく、交錯する少女たちの葛藤、苦悩、嫉妬、挫折を丁寧に描いている。それをセリフだけでなく、絵で語り、構図で語り、間で語る、演出が非常に巧み。
そして地下の舞台では夜な夜な〝トップスタァ〟を目指す少女たちの真剣勝負が繰りひろげられる。比喩ではなく、本当に武器を使った戦い、戦闘である。それが美しい音楽に乗って、まるでミュージカルのように華麗に展開していく。舞台装置はド派手で、演出は外連味たっぷり。なにしろ舞台に津波が押し寄せ、空から東京タワーが降ってくるのだ! エネルギーの塊みたいなアニメである。
そして今回の本題、中盤には〝とんでもないどんでん返し〟が待っている。趣向としてはミステリー的どんでん返しなのだが、まったく予期せぬタイミングでぶちかましてくれるので、お口あんぐりですよ。しかも見返すと、一話から大量の伏線が仕込まれているではないか! 気持ちよく「やられた!」と叫べる、お手本のようなどんでん返しなのだ。前述の日常描写も含めて、脚本の巧みさは近年のアニメでもトップレベル。
脚本・演出・作画・音楽・どんでん返し、なにもかもが高次元で融合した稀代の傑作アニメ。ミステリー好きも必ず楽しめる作品なので、アニメに抵抗がなければ〝運命〟だと思って見てほしい。
みんなを、スタァライトしちゃいます!
伽古屋圭市(かこや・けいいち)
1972年大阪府生まれ。第8回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した『パチプロ・コード』(文庫化にあたり『パチンコと暗号の追跡ゲーム』に改題)で2010年にデビュー。著書に『からくり探偵・百栗柿三郎』『散り行く花』『冥土ごはん 洋食店 幽明軒』『あやかしよろず相談承ります』『かすがい食堂』などがある。
『超短編! 大どんでん返し』
編/小学館文庫編集部