◎編集者コラム◎ 『聖週間』アンドレアス・フェーア 訳/酒寄進一

◎編集者コラム◎

『聖週間』アンドレアス・フェーア 訳/酒寄進一


聖週間シリーズ文庫

 昨年1月の『咆哮』、7月『羊の頭』に続き、〈ヴァルナー&クロイトナー〉シリーズ第3弾となる『聖週間』が刊行となりました。前作から1年、楽しみに待ってくださった方もいらっしゃるでしょうか。

 凍った湖の氷の下から金襴緞子のドレスを身に着けた少女の死体発見(『咆哮』)。山頂で男の頭部が銃で吹き飛ばされる(『羊の頭』)。ショッキングなシーンから始まるこのシリーズですが、『聖週間』もそこは裏切りません。クリスマスの朝、人気女優カタリーナ・ミルルートの娘が、散弾銃で撃たれた状態で発見されるのです!

 4か月後が経ち、復活祭前の聖週間に配送車の荷室から別の女性の遺体が発見されます。10年以上前にミルルート家の前で交通事故に遭い、美しい顔の半分を大やけどによって失った元女優のハナでした。ハナの周辺の捜査によって、意外な人間関係と封印された過去が浮き彫りになっていくのですが、ヴァルナー警部とクロイトナー巡査が辿りつく真実とは──。

 本作のタイトル『聖週間』とは、復活祭(イースター)前の1週間を指し、受難週ともいうそうです。といっても復活祭自体、日本ではあまりなじみがないかもしれません。ちなみに復活祭は、キリスト教でイエスキリストの復活を記念する祝祭日。春分後の最初の満月のあとの日曜日に行われます。もう一つ、本作で知ったのは「オーペア」というドイツの留学制度。ホストファミリーの家で家事や子守りなどの手伝いをすることで食費や宿泊費などが免除されるそうです。

〈ヴァルナー&クロイトナー〉シリーズと謳いながら、外回りの多い巡査と、捜査を指揮する警部だけに絡みが少なかったのですが、本作では冒頭からふたりの活躍が見られるのも嬉しいところ。無鉄砲な熱血漢であるクロイトナー、仕事では冷静ながら恋愛下手の冷え性持ちというヴァルナー、それぞれのキャラクターにも個人的に愛着がわきました。

 シリーズ第1弾の『咆哮』は、南ドイツの人気作家アンドレアス・フェーアが、2010年にドイツ推理作家協会賞(フリードリヒ・グラウザー賞)新人賞受賞作。本国では今年の年末に10作目の刊行も予定されているようです。訳者の酒寄進一さんが『羊の頭』に寄せてくださった解説によると、刑事になりたてのヴァルナーと若き日のクロイトナーが描かれるそう第5作、フェーアの人気シリーズ〈弁護士アイゼンベルク〉の探偵が登場する第7作など、シリーズの今後にも目が離せません。

──『聖週間』担当者より

聖週間

『聖週間』
アンドレアス・フェーア 訳/酒寄進一

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