◎編集者コラム◎ 『増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず』佐藤愛子
◎編集者コラム◎
『増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず』佐藤愛子
2021年8月に『九十歳。何がめでたい』の続編、何より愛子センセイの最後の一冊として刊行された本作。≪みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります≫という最後の一文は大きな反響を呼び、たちまち25万部を超えるベストセラーとなりました。が、ファンの皆さんはよくご存じのように、あれから3年、昨年100歳を迎えた愛子センセイは今も現役作家として筆を執っていらっしゃいます。めでたい!
というわけで、文庫化にあたっては、100歳を超えてなお活躍を続ける愛子センセイの集大成として、その魅力が余すところなく伝わるような増補版を編集しました。前作『九十歳。何がめでたい』の文庫化(『増補版 九十歳。何がめでたい』)では50ページ超の追加が精一杯でしたが、今回、文庫化に当たって新たに加えたページ数は実に130ページ超!
順番に説明しますと……
惜しまれつつも休刊した『週刊朝日』の林真理子さんの人気対談連載「マリコ・コレクション」に愛子センセイが登場された回の再録。愛子センセイが若い頃の文壇事情や現在の生活ぶりについて、林さんだからこその根掘り葉掘りがとても楽しい対談となっています。
文芸誌『すばる』での対談の再録。綿矢さんが愛子センセイの大ファンとのことで実現したもので、年若い綿矢さんに愛子センセイが胸襟を開いて、小説の書き方、文学仲間、人間観などについてお話ししている様子が伝わってきます。
群さんが愛子センセイの大ファンになったのは高校時代。以来、ずっと読んできたという群さんが愛子センセイの魅力と歴史を綴っています。群さんは愛子センセイを「愛ちゃん」と呼ぶのですが、その筆致がラブレターのようでキュンとします。
同じ時代を生きたおふたりについて、愛子センセイが綴った追悼エッセイは、いかにおふたりが魅力的でおかしな人間だったか、作家としての業も含めて、通り一遍ではない具体的なエピソードを通してユーモラスに明かしています。
愛子センセイ100歳の年譜を、秘蔵のお写真と共に掲載しています。かの遠藤周作さんが灘校時代、甲南高等女学校に通う愛子センセイに見惚れたという伝説がありますが、さもありなん! と思えるうら若き愛子センセイのお写真も載っていますのでぜひご覧ください。
そのほか、愛子センセイのインタビューや単行本未収録のエッセイもたっぷりと掲載しているのと、「後書き」をいただきにあがった私が返り討ちに遭ったやりとりを掲載した「『文庫化にあたっての後書き』にかえて」もご笑覧ください。そしてもうひとつ(一体いくつあるんだ!)、上路ナオ子さんが描いたイラストも単行本時から増量! 愛子センセイも大のお気に入りの上路さんの絵もそこかしこに載っていますので、ぜひご注目ください。
実は本作、6月21日に全国公開される映画『九十歳。何がめでたい』のもう一つの原作でもあります。愛子センセイを演じる草笛光子さん(御年90歳!)が「いちいちうるせえ」と啖呵を切るカッコイイ全面オビを巻いて書店に並びます。映画では、『九十歳。何がめでたい』が生まれるまでの秘話が(虚実交えて面白く?)描かれていますので、ぜひ劇場に足をお運びくださいませ。
最後に……『増補版 九十歳』は背景が紅色、『増補版 九十八歳』は背景が白色で、2冊並ぶとめでたい紅白カラーになっています。2冊あわせて大切なかたへのプレゼントにどうぞ。
──『増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず』担当者より