◎編集者コラム◎ 『ナゾトキ・ジパング SAKURA』青柳碧人
◎編集者コラム◎
『ナゾトキ・ジパング SAKURA』青柳碧人
日本文化をテーマにしたミステリ。探偵役は、日本が大好きな外国人留学生!
企画が固まって、最初に訪れたのは書店の洋書コーナーでした。目的は、日本の文化を英語で紹介している本を探すこと。旅行ガイド、和食のレシピ、着物や刀の写真集などさまざまな本がある中で、よりマニアックなものを、と書棚を巡るうちに見つけたのは『日本 その姿と心』(日鉄総研)という本でした。
文化だけでなく、歴史や宗教、政治や経済まで、日本のあらゆることを説明している事典のような本です。英語もままならない私ですが、ページをめくるたびに日本についての知識のなさを突き付けられ、読みごたえしかありません。
『ナゾトキ・ジパング SAKURA』の主人公で、Los Angels出身のケビン・マクリーガルの本棚にもきっと並んでいて、私なんかより断然使いこなしているんじゃないかと思います。
ケビンは、旅行会社に勤める父を持ち、子どもの頃から日本に憧れていました。大学生になり、念願かなって留学生として精南大学に入学します。寮での同室は、成績はからっきしながら人望は厚い秀次。寮生が巻き込まれた殺人事件を、ケビンが解決に導いたことをきっかけに日本文化への愛と抜群の推理力でさまざまな謎に挑んでいくことになります。秀次とケビンが一緒にいると、なぜかいろいろなことが起きてしまうです……。
SAKURA、FUJISAN、CHA、SUKIYAKI、KYOTO──5つの物語は、ケビンの本棚から選ばれたような、日本文化にまつわる一冊の本の〝エピグラフ〟から始まります。かつて日本を訪れた人の旅行記や、世界中で有名な旅行ガイドブック、エラリー・クイーンや岡倉天心の名著など。導入として物語に引き込むだけでなく、引用した本のほかのページも読んでみたくなるので、読後は引用文献のリストを参考に新しい本に出会っていただけたらと思います。
話題がそれてしまっていましたが、青柳碧人さんの読者をぐいぐいとミステリの世界に引き込む筆力は、本作でも遺憾なく発揮されています。昔話を題材とした『むかしむかしあるところに、死体がありました。』、童話を題材にした『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』などに並ぶ、最高にキャッチーなストーリーです。
書評家の三宅香帆さんは、本作の解説の中で「扉をひらく力。──それが青柳碧人という才能の一側面であるとしたら、きっとその姿は本作で描かれたケビンたちの姿にも、どこか重なってくる気がしている」と書いてくださっています。本作が、日本文化とミステリの新たな扉をひらく一冊となることを祈っております。
そして本作のシリーズ第2作『ナゾトキ・ジパング HANABI』が8月に刊行予定です。ケビンや秀次、大学の仲間はもちろん、クセ強めの田中撫子刑事たちも大活躍。こちらもよろしくお願いいたします!
──『ナゾトキ・ジパング SAKURA』担当者より