◎編集者コラム◎ 『ふくふく書房でお夜食を』砂川雨路

◎編集者コラム◎

『ふくふく書房でお夜食を』砂川雨路


『ふくふく書房でお夜食を』写真
作中に出てくるシチューがとても美味しそうで、原稿を読みながらいつも食べたくなっていました

ふくふく書房でお夜食を』の編集者コラムをご覧いただきありがとうございます。編集者のA田と申します。

 著者の砂川先生から本作のプロットをお送りいただいたのは二年前の夏のことで、それはこんな文章からはじまっていました。

 東京23区のはずれ、古びた商店街の端、路地をちょっと入ったところにある小さな書店・ふくふく書房。


 中年の店主と若い娘が営んでいる。看板犬に雑種のフクコ、看板猫の大福。

 昼間は団地の高齢者や、商店街の人が店先のベンチでお茶を飲んでいたりするアットホームなお店である。

 しかし、ふくふく書房は時折夜に営業をしている。21時過ぎ、商店街の多くの店がシャッターを下ろす中、その路地からはささやかな灯りが漏れている――。

 何やら素敵な物語が紡がれそうな雰囲気があふれていて、「この物語、絶対読みたい!」 と一瞬で心を掴まれました。

 砂川先生は、作中でこの「ふくふく書房」のことを「夜の小さな休憩場所」と評しています。読んでいて、とても素敵な言葉だなと思いました。

 私にとって、そして読者の皆様にとっても「ふくふく書房」は夢のような空間なのではないかと思います。

 店を切り盛りするのは、元料理人の夏郎とその娘の成(なる)。たまの夜更け、店の前に赤い提灯が飾られている際に店内に入れば、本と本に囲まれた薄暗い店の奥には食堂が開かれ、名作にまつわるおいしい夜食が待っている。

 さらに上階にはお風呂と布団まで用意され、希望すれば宿泊までできるというのですから驚きです。

 ただ、砂川先生はそんな夢のようなお店を夢という言葉で形容することはしませんでした。

 私は勝手ながらそこに、つらい時、かなしい時、誰もが必要とする「夜の小さな休憩場所」、そんな場所は夢物語であっていいはずがない、きっと、この世界のどこかに存在するはずだ、

 という願いのようなものを感じ取っておりました。
(砂川先生、全然解釈が違っていたらすみません汗)

 皆さんには、疲れた時にこそ訪れたい、そんな「休憩場所」はありますか?

 もしもなければ、本書を片手にそんな心癒やされる場所を探してみるのはどうでしょうか。

 天麩羅蕎麦にひつまぶし、シェパーズパイにホワイトシチュー、ホットケーキにクッキーまで。あなたが元気を取り戻せますように、今宵も「ふくふく書房」はひっそりと営業をしております。

 温かなお夜食が食べたくなったら、ぜひ、本書をお手にとってみてください。よろしくお願いいたします。

──『ふくふく書房でお夜食を』担当者より

ふくふく書房でお夜食を
『ふくふく書房でお夜食を』
砂川雨路
乗代雄介〈風はどこから〉最終回
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