◎編集者コラム◎ 『ぎんなみ商店街の事件簿(Brother編・Sister編)』井上真偽
◎編集者コラム◎
『ぎんなみ商店街の事件簿(Brother編・Sister編)』井上真偽

一般的に、編集者はひとりの作家にひとり付く、ということが多いです(出版社によっては雑誌担当と単行本担当、文庫担当と複数いることも)。ところが弊社の井上真偽さん担当は、これを書いているOと、先輩Mさんのふたり。数年前の編集会議で、最近面白かった本であるとか、依頼したい作家であるとかを話していたとき、Mさんが「井上真偽さんがめちゃくちゃ面白くて」と言い、それに私が「ですよね!! うちでも書いてもらいたいです!!」と食いついたのが発端。ならばふたりで会いに行こうとなったのですが、当時Mさんは文芸誌「きらら」班、私は「STORYBOX」班。どっちで書いてもらうかはじゃんけんで決めることに……なるはずもなく、その時生まれたのが「二誌同時に連載してもらう」というとんでもないアイデアだったのでした。
いざお目にかかって恐る恐るそんな提案をしたところ、真偽さんはしばし逡巡したのち、「面白そうですね」と思いのほかあっさりとこの企画に乗ってきてくれたのです。その後、「きらら」はWEB「小説丸」となり、「STORYBOX」と「小説丸」での同時連載を経て2023年秋に単行本を刊行。その後の快進撃はご存じの方も多いと思います。
ひとつの事件を三姉妹側、四兄弟側別々の視点で読み解いていくと、まったく違う真実が浮かび上がる……という構成はもちろんのこと、どちらから読むか悩んだり、友人と片方ずつ読んで検証したりなど、読書の枠を超えた「体験」として楽しんでくれた方が多かったのが、予想以上でもあり嬉しかったことでした。
体験と言えば、本作で「編集者として初めての体験」もたくさんさせてもらいました。毎週のようにかかる重版、テレビCM、社内で「企画功労賞」と表彰まで。そして今回の文庫化に際しては、なんと発売前重版が決定! これもまた初めての体験でした。伴走者でしかない編集者ですが、それでも新たな世界が広がるようで、嬉しくてたまりません。
さらに、12月には、続編『白雪姫と五枚の絵 ぎんなみ商店街の事件簿2』が刊行になります。本作は「見立て絵」に隠された謎を三姉妹・四兄弟が追います。今度は1冊? とお思いかもしれませんが、実は、全5話のうち最終話を除く4話はほぼ同じ1週間の出来事を都久音、福太、佐々美、良太それぞれの視点で描いています。つまり、「この時、あの人は別の場所でこんなことを!」というパラレルならぬマルチ進行で楽しめるというわけ。その緻密さはまさに超絶技巧。描写ひとつ見逃せないくらい伏線が張り巡らされていますので、ぜひこちらもお楽しみに!
──『ぎんなみ商店街の事件簿』担当者より





