ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第12回
ついにここまで来たか。
「一物の優劣は大小で決まらない」ということは、古事記にも書かれているが、一見して「すごそう」と思うのはやはり「100万部」の巨根の方であり、読者という名の御婦人、または紳士方も「一度試してみようかしら」という気にもなりやすい。
それに対し小さい(数字が)方はいくら「小ぶりながら技が光っている」「試してみれば良さがわかる」と言っても、目に見えて小さい(数字が)と、その時点で「いやいや結構ですわ(笑)」となる人が多くなってしまうのだ。
つまり、小さい数字を出し「売れてない」というイメージを持たれると「手に取らせる力」が格段に落ちてしまうのである。
一旦、手に取らせれば、大きさではなく色、艶、味などで唸らせることが出来るかもしれないのに、そこまでにすらいけなくなってしまうのだ。
だったらそんなものは、パンツに隠しておいて、知らずに握る人を待った方がまだましだ。
今のところ本の部数や実売数に関しては限定生産とかでない限りは小さいことが「売り」になることはない。
それに、物を売るには、商品の品質も大事だが、売る方の宣伝や売り方も重要なのだ。
よって「うちで出した本これだけしか売れてません!」と暴露するのは「弊社、本を売るのヘタクソ侍と申す」と名乗りを上げているようなものになってしまう。
つまり、作家、出版社、両方にとってデメリットしかないのだ。
そしてもう一つ「作家が凹む」という最大のデメリットがある。
もし、動機が、会社がどれだけイメージダウンしようが、俺は作家個人を凹ませたかったのだ、というものなら納得だし「最善の方法をとった」と言えるので二階級ぐらい特進させて良い。
実は作家というのは、どれだけ刷られたかという「発行部数」は必ず教えられるが、実際どれだけ売れたかという「実売数」は、聞かなきゃわからないのである。
私も今まで20冊以上本を出してきているが、今まで実売数をわざわざ言ってきた担当は1人もいない。
私の担当と言えば「全員サイコパス」でお馴染みなので、今回のことは「サイコパス以上の何か」ということである。