ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第128回
「人間には向き不向きがある」
と言いたいが、
向きが存在しない人間はいる。
私からすれば「俺は悪くないけど今日は部下がやった件について頭をこすりつけに行くぜ」という夫の業務内容は聞いただけで食欲がなくなってクラムチャウダーしか食えなくなるが、夫からすれば、この白紙を4コマに区切って全てに絵を描き、それを24回繰り返し、最後に何となくオチをつけろと言われる方が途方に暮れるし、1枚目で狂を発する話なのかもしれない。
そう考えれば、分野の違う人間同士を比較すること自体無意味なことである。
棒で球や駒で盤を殴打することが得意でもないし特に興味がないという人間が、それが死ぬほど得意な上に努力もしている大谷さんや藤井さんと同年代という理由だけで比較しても条件が違いすぎて比べること自体が無理なのだ。
それより、自分に向いていることや辛うじてできることを見つけて、努力したほうが「成果と年収が違うだけで方向性はあいつらと同じ」と言うことができる。
よって、会社員である夫と漫画家である私の社会性を比較することにも意味がない。
これからも夫は肛門括約筋を鍛え、私はより高速で耳を痙攣させられるよう邁進していけばよいのである。
そして足りない部分を埋め合っていけばいい。
幸い私は足りない部分を作りだすのは得意である、かなり埋めがいがあるので、そんじょそこらの不足では物足りないという人にも満足していただけると思う。
(つづく)
次回更新予定日 2024-4-10