ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第134回
瞼が高速痙攣するような
前置きが長くなったが、結論は「2兆円与えろ」である。
もうこの際私に与えろとは言わない。全員に与えて構わない。私も不惑をすぎて妥協を覚えた。
そして、そんな厳しい社会からいられなくなったのが私である。
「排除された」とは思っていない。私の退職は会社にとって「白血球がやっと仕事した」みたいな話であり、自浄作用の結果そうなっただけだ。
出産や育児が迷惑とされる世の中や会社はおかしいが、ガチの迷惑をかけてくる奴が存在するのも事実である。
そういうタイプですら許容できるのが真に余裕のある社会なのだろうが、それはもはや桃源郷やガンダーラの域なので現世では難しい気がする。
よって、私が会社を辞めて一番良かったと感じるのは、私の行動で周囲にしわ寄せが起きなくなったという点である。
ちなみに、出版社や編集への迷惑はもちろんノーカンである。編集者が漫画家の行動を迷惑に感じるというのは、それこそ親が自分の赤子の泣き声を騒音扱いしているようなものだ。
それが嫌なら最初からこんな連中で商売をしようなんて考えないでほしい。犬を飼った後で「こんなに吠えてウンコするとは聞いていない」と言っている奴ぐらい無責任だ。
アシスタントを雇ったり、チームで仕事をしている作家はまた別だろうが、私はずっと1人なので、原稿作成工程において、私が急にラインから消えたことにより、他の誰かに負担がかかるということはない。
では、私が発生させた負担はどこに行くかといえば、私に戻って来る。
1人で仕事をしていると、迷惑をかけるのは俺、かけられるのも俺というアニメ彼岸島の声優状態になるため、自分が発生させたものを他人が被ることがなくなる。
しかし、自分が吐いたゲロを自分が浴びることで相殺されゲロが亜空間に消えるということはなく、自分が風呂に入らない限り永遠に異臭を放ち続け、結局他人にも迷惑をかけるのだ。