ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第135回

「ハクマン」第135回過激で事実と異なる
見出しの記事が増えまくり、
TLが大変なことになっている。

呼んだからと言って助かるとは限らないし、むしろ漫画の助けを呼んだ上で死ぬ率は異常だが、呼ぶ権利ぐらいはあるはずだ。

しかし「何故トラックに轢かれて死にかけている俺が自分で救急車を呼ばなければいけないのだ」という気持ちもある。

自分一人なら、自分で呼ぶのもやむなしだが、漫画作品には最低でも担当編集が一人同伴しているはずである。

そもそも、宣伝は漫画家の仕事なのかという話なのだが、SNSでの宣伝は編集や運営より、本人がやった方が効果的というのも事実だし、自分の生死がかかっているのに「誰かが119してくれないなら諦める」というのも潔すぎる。

よって、自分で自分のアカウントに漫画を投稿して、宣伝するのはやぶさかではない。

だが「宣伝素材」ぐらいは編集が用意してくれないかと思う。中には宣伝用として1話分の画像を送ってくれる編集もいるが、大体が自分で自分の電子書籍を購入してスクショを撮って投稿という、1枚1枚心のこもった宣伝になってしまっている。

そしてついでに「〇〇が✕✕した話」構文もそっちで考えてほしい。もともとキャッチコピーやサブタイトル、煽りは編集部側がつけている場合が多いのだから、それはそっちの領分だろう。 こっちも、自分の真面目な闘病エッセイなどに「肛門が爆発して死にかけた話」など、毎回できるだけ下世話な見出しを考える自傷行為はしたくないのである。

「ハクマン」第135回

(つづく)
次回更新予定日 2024-7-24

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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