ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第23回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第23回

「ユーチューバー」になりたい男子のように、
「漫画家」を目指していた私も、
「もっとちゃんとした職業につきなさい」と言われてきた。

 言うまでもないが、ユーチューバーも数が増えすぎた今、成功するには、才能と努力が必要な職業になっている。

 ちなみに「漫画家」は、男女ともにランキング外だ。
 確かに今は、出版不況など、漫画に対して景気の良い話はあまりないご時世である。

 よって今後も漫画家が子どもの人気職業に入ってくることはなさそうだが、いつの時代も「クラスに漫画家を目指す奴が一人はいる」ような気もする。私もその一人だった。

 漫画家を目指す子どもには3種類いる。
 まずは、本当に漫画家になりたい子ども、そして、決して絵が得意なわけではないが、他全てが壊滅的に出来ない子ども、あと「それ以外」だ。

 私は言うまでもなく2番目である。
 2番目みたいな子どもは、他一切褒めるところがないため、周囲の大人は消去法で絵を褒めるしかなくなってしまうのだ。

 そうすると、子どもは自分には絵の才能があると思ってしまうし、さらに「絵を描けば承認欲求が満たされる」ということを学んでしまうのだ。
 その結果「漫画家になる」という結論に達してしまう。

 この「承認欲求」というのは、今も、私の漫画や絵を描く動機の一つになっている。
 一番の理由は、言うまでもなく金だが、サインイラストや色紙など、タダの仕事でも、読者が喜んでくれるなら「そうか、俺の絵が嬉しいのか」という承認欲求が満たされるので、十分やる価値があると思っている。

 そういうと、不純な動機でしか絵を描いてないように聞こえるかもしれないが「金や承認欲求を目的に労働するな」といわれたら、人類は餓死かメンをヘるしかなくなってしまう。

 ジョジョの露伴先生が「この岸辺露伴が金やちやほやされるためにマンガを描いていると思っていたのかーッ!」とブチ切れてしまったせいか、プロアマ問わず、世間は金やちやほやのために漫画を描いている人間に対して何故か厳しい。

 だがどう見たって、露伴先生は「変わった人」だろう。
 何故そんなエキセントリックな人の考えが「漫画家のスタンダード」だと思えるのか。
 むしろ、スタンドを出せない漫画家は全員金やちやほやのために描いていると思って欲しい。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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