ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第58回
マーケティングは、
インフルエンザの仲間ではない。
先日何回か仕事をさせてもらった広告系の会社から「インフルエンサーマーケティングについてリモートヒアリングをさせてくれないか」という依頼があった。
「この依頼内容を理解する知能がこちらにない」という理由で断ろうかと思ったが、世話にはなっているし、次の仕事に繋がるかもしれない。
何より私をインフルエンサーと思って意見を仰ごうとしているという、隠しきれない暗雲に魅力を感じた。
私は一寸先がダンサーインザダークになっている人が大好きだし、自分もその闇を濃くする一助になれればと常日頃から思っている。
だが未だに「インフルエンサー」という言葉自体を正確に理解しているわけではないし、むしろ「インフルエンザの仲間カナ(^_^;)」と言いそうになる口をまつり縫いするのに手いっぱいという状況だ。
特にコロナの台頭でインフルエンザが「なんだ、ただのインフルか」と言われてしまっている状況でこれを言うのは本当にヤバい。
そんなわけで改めてインフルエンサーとは何か調べてみたところ「世間に与える影響力が大きい行動を行う人物のこと」という極めてシンプルな説明が出てきた。
インフルエンサーが「このニプレス、マジで乳首が消える」と言えば、影響を受けた人間がその商品を買い、巷には乳首の存在を感じさせない人間が溢れる、という現象を利用し、インフルエンサーを使って企業が宣伝を行うことを「インフルエンサーマーケティング」というらしい。
ますます何故私に話を聞こうと思ったのか謎だが、漫画家もインフルエンサーになり得るのは確かである。
インフルセンサーと聞いたら、ユーチューバーやインスタにキラキラした写真を載せている人、もしくは胸の谷間を強調しながら料理をしている人、というイメージがあるかもしれないが、おそらく一番簡単なインフルエンサーの定義は「SNSのフォロワー数」だ。
ツイッターは、漫画やイラストを投下するのに適したツールである。
よってインフルエンサーと言ってよい数のフォロワー数を抱える漫画家やイラストレーターは少なくない。
そしてフォロワーの多い作家が商品PR漫画を描くことも今では珍しいことではない。
むしろ珍しくなさすぎて、すでにインフルエンサーマーケティング業界は応仁の乱級に混迷を極めた状態なのだという。
ユーザーが「そのまま像にしてシンガポールに置けそうなほど爽快な鼻うがいをしてえ」と思い立ち、インスタとかで「#鼻うがい」と検索すると、全ページインフルエンサーたちがキメ顔で鼻から滝を流している写真で埋め尽くされてしまうという。
今のは例えだがPR広告ばかり出て来て、本物の口コミに到達できなくなっているのは本当のようである。