ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第58回
マーケティングは、
インフルエンザの仲間ではない。
何故PR広告があてにならないか、というと「金貰って宣伝しているから」に他ならない。
金を貰っていたら、商品がどんなにクソでも褒めるに決まっているのだ。
ただし「嘘をつく」というわけではない。
例えば映画なら「よく寝れた」「今まで見てきた映画の面白さを再確認できた」「デビルマンの方がクソ」など、何とか褒める部分を見つけ出して褒める。
そしてクソな部分に関しては「書かない」のだ。
もちろん本当に良い商品の場合もあるが、あまり良くない商品だったとしてもPR広告でそれを言うことはない。
それでも一応、嘘ではないPRにはなるのだが「参考になるPRか」と言われたら、金を貰っていない、むしろ払っている側の人間のレビューの方が本音な分信頼できる。
つまり、映画デビルマンに満額1800円払っている私のデビルマン評は信頼してよいということだ。
このように、インフルエンサーマーケティングが乱立し過ぎて、お年玉で買ったゲームがクソだった小学生による血を吐くような渾身のレビューが、小銭をもらった大人たちのぬるま湯PRに埋もれてしまっている、というのが現状のようだ。
ユーザー側も「PR」と書いてある時点で冷めてしまう人は多いし、まともに見ないという人もいる。
そこで「じゃあPRということを隠せばいいんだ」という天才的アイディアで生まれたのが、定期的にバレて炎上している「ステマ」である。
このように、消費者に届くのが、忖度か半犯罪という地獄の二択になっている世の中を憂い、もっとユーザーの役に立てる、インフルエンサーマーケティングができないだろうか、ということらしい。
本格的に何故私に話を聞こうと思ったのかわからないのだが、消費者に正確な情報が届くのは良いことである。
しかしPR漫画を描く側からすると、いくらクライアントに「忖度なしで描いてください」と言われてもなかなか難しいのだ。
少なくとも金を払ってくれる時点で「俺に金をくれるところが良い」と褒めたくなってしまう。
こちらも公平に描こうと思っても、無意識のうちに「どうにかして良いところを見つけるぞい!」という意気込みになってしまっているため、完全にフラットな意見かと言われると自信がない。
インフルエンサーマーケティングに正確性を出したいならまず美容アカに化粧品を宣伝させるなど、インフルエンサーの得意分野である案件をやらせた方がいい。
当たり前だと思うかもしれないが、フォロワー数が多い、というだけで全く詳しくない、最悪「興味がない」商品を宣伝させているケースもなくはない。