ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第62回
正直なところ、
自分のサクセスより、
他人の大コケが欲しい。
自分のサクセスより、
他人の大コケが欲しい。
つまり、仕事的にはもちろん、精神面でも漫画家はコロナの影響が極めて少ない職業だったと言える。
しかし、今更漫画家のメンタルにコロナの影響が出ているという説もある。
まだ、みんなが真面目に自粛し、公園で酒盛りもせず、自粛しない奴が角材で殴られていたころ「自分はいつも通りなんで割と平気」と言っていた作家たちが、今になってメンタルに変調をきたしているらしい。
私の場合、調子の悪い日と、すごく調子が悪い日しかないため、コロナの影響ではなく、いつも通り何の理由もなく調子がすごく悪くなっただけかもしれないが、コロナのせいではないとも言い切れない。
ちなみに、作家の「病(ビョウ)み」というのは、売れている、売れていないにはあまり関係ないらしい。
作品が全く売れず、打ち切り続きで病(ビョウ)むと言うならわかりやすいが、人気があり仕事的には調子が良い作家でも、突然病(ビョウ)んで描けなくなるそうだ。
私に調子が悪い日とすごく悪い日しかないのは、売れてないせいであり、売れさえすれば、人生の中に「若干調子が悪い日」がログインしてくる、と信じていた私にとって、売れても関係ないというのは「何してもお前は不幸」という絶望的事実である。
しかし今は逆に「サクセスした他人も、サクセスとは無関係に不幸になる可能性がある」ということが、新たな希望になっている。
このように、希望はどこにだってある。
今泥沼に浸かっている人間も、無理にそこから出ようとせず、あえて自ら潜って、その底にあるかもしれない希望を抱いて泥沼で永眠という生き方もあるのだ。
(つづく)