ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第67回
影響が少ない職種だ。
いつも通り売れないだけである
しかしワクチンを打てと国が言うのは、こちらの命を慮ってのことではない、車の自賠責保険に加入義務があるのが本人のためではなく、万が一事故を起こしてしまった時、被害者に賠償するためのものである。
それと同じように、コロナもワクチンを打たずに感染し、それがさらに他人にうつったら迷惑だからだ。
いくらひきこもりと言っても、アマゾソの箱を持った黒おキャット様ヤマトの人とは3日に1回ぐらいのハイペースで顔を合わせている気がするので、感染も、うつす可能性も十分にある。
無人島に住んでいるか、どこかに監禁されていない限りはみんな打った方が良いのだ。
しかしある意味コロナよりも漫画家が恐れているのが「副反応」である。
ワクチンを打つと、熱が出たり頭痛がしたり、腕に「名を口にしてはならない『あの方』」もしくは黒龍が宿って腫れや痛みを伴い、1,2日休養を余儀なくされる人もいるという。
この1,2日が作家にとって命取りになりかねないのだ。
実際、週刊誌でストーリー漫画を連載している漫画家は二日寝込んだら確実に原稿を落とすので、休載なしにワクチンを打ちにいくのは無理だという話も聞いたことがある。
昔であれば漫画家というのは休みがないのはもちろん徹夜も当たり前みたいな世界観だったようだが、最近は定時に終わって土日は休んでいると公言している作家も多い。
しかし依然ギリギリで、作家の後ろで担当が腕を組み、舌打ちと貧乏ゆすりでリズムを刻みながら後方般若ヅラをしている「これ手塚先生の自伝漫画で見た奴だ!」という光景を繰り広げている作家もまだ存在するそうだ。
だが、全てを手書きし、カッターでトーンを貼ったり担当を刺したり手首を切っていた時代に比べ、今はデジタル化が進み、作画の手間は大幅に省けるようになったはずである。
それにも係らず、何故漫画家のスケジュールは今もギリギリで、カッターで担当や手首が切られ続けているのだろうか。
これは漫画家に限らず全ての業種に言えることである。
昔は手書きしていた書類もパソコンで作れるようになったし、そろばんで計算していたものも、今ではエクセルが一瞬かつ間違いなく計算してくれるようになった。
そう言いたいところだが、未だにエクセルを「表計算ソフト」ではなくワード感覚で使用している現場は多いらしい。
だが、元事務員として名誉のために言わせてもらうが、事務員の癖にエクセルの存在意義すら知らず、数字と文字を一つのセルに入れたり、データにグラフの「画像」を貼りつけているわけではない。
事務員というのはパソコンを使えないエライ人の命令で書類を作ることも多いのだ。
使い方を知らない人というのは当然エクセルで何ができて何ができないかわかっておらず、酷い時は「パソコンを使えば何でもできる」と思っている節があるため、事務員のエクセル知識はもちろん、エクセルの機能すら遥かに凌駕したデザインの資料を作れと言って来たりするのだ。