ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第71回

ハクマン第71回ツイッターの「スペース」で
同業者同士、どうでもよい
世間話ばかりしている

最近ツイッターのボイスチャット機能「スペース」でトークをすることが増えた。

誰と話しているかと言うと、もちろん壁、もしくは己の後頭部、と言いたいところだがそれはオフラインでやっているのでオンでまでやることではない。

全世界中の人と繋がれ、お話しできるのがネット、そしてSNSの利点である、少なくとも我らがツイッターさんはユーザーにツイッターを自分の世界お広げ目的に使ってほしいと願っているようだ。

それにもかかわらず、最初は「いろんな人とつながりたい」とプロフに書き、砂浜でジャンプしている写真をアイコンにしていた奴が、半年ぐらい経つと、アイコンが、目、手、足など、とにかくパーツアップのメンヘラ鍵アカになってしまう、ツイッターで逆に世界狭めがちな我々である。
よって、日本は珍しくインスタよりツイッター使用人口が多い国なはずなのに、ツイッター社にあまり大切にされていない感がある。

確かに製造業にとって一番嫌なのは「こちらが想定した用途で使わない客」である。

商品にオタクのお気持ちよりも長い注意書きが書かれているのは「でも尻に挿れてはダメとは書いてはなかったぞ」というクレームを避けるためだ。
特にアメリカは訴訟大国だ、アメリカ企業であるツイッター社にとって日本人はケツに湯飲みを挿したまま怒りくるっている厄介な客でしかないのかもしれない

ディスコードやクラブハウスをオープンでやっていると突然外国人が入ってきて「なんだコイツ」となることがあると思うが、多分ツイッターが望んでいるのはそういう言葉が通じなくても果敢に国際交流をするタイプである。
非公開な場でイツメン同士が「100万回はしたよねこれ」みたいな話をしている方が「なんなんだお前ら」なのだろう。

ちなみにアイコンは体のパーツより「デフォルトのたまご」に戻る奴が一番怖い。

よって「誰でもいいからお話ししましょう」みたいなことは当然出来ない、それが出来たら自分の後頭部と朝まで生討論するような人生にはなっていない。

かといってギガを消費してまで私とオンで喋ってくれるオフの友人もいないため、結局ネットで知り合った業種が近い人、つまり漫画や漫画関係者と話すことが多い。

オタクなのだから、好きなゲームやキャラについて語れる人とでも話せば良いのではないかと思うかもしれない。
確かに桃鉄ファンの集いであれば、うんちとオナラの話が一生続くだけであり話している方も聞いている方もずっと笑顔だ。
しかし「推し語り」などになると急に政治や宗教に並ぶセンシティブな話題となり「カプ語り」となるともはや「黒ミサをやっている」という通報案件になりかねない。
つまりそういう話は「公ではせず、クローズドな場で宗派が同じ者同士だけで話しましょう」というのがマナーだったりする。

 
次回更新予定日
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『吉祥寺デイズ うまうま食べもの・うしうしゴシップ』山田詠美
◇長編小説◇白石一文「道」連載第12回