ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第75回

今年の正月も
不動の変質者として
実家へ行ってきた。
同窓会に出席していいのは「今何やっているの?」という滅びの呪文に眼球が破裂しない者だけ、という世界一過酷なドレスコードがあるのは周知の事実だが、眼球爆発勢自ら「不参加」を選べるだけまだ優しい世界でもある。
片や「親戚の集まり」というのは「手持ちで一番キレイな服がヒートテック」という人間ですら参加せざるを得ない会合なのである。
参加したところで、どうやって生きているのか不明な親戚一の変わり者でしかないが、不参加を決め込んでも「正月の集まりにすら顔を出さない変わり者」になるだけなのである。
そんなわけで今年も揺るぎなき不動の変質者として双方の実家へ行ってきた。
だが私の実家には「父親」というレジェンドがいる。
その父親は去年末倒れてしまい現在入院中のため、正月の集まりには不在だったのだが、いないことにより、逆にその会合の話題はずっと父親がどれだけ変わり者であったか(生きている)に終始しており、現役にもかかわらず私の変質ぶりなど全く相手にされないという親父の不戦勝であった。
このように「いなくてもずっとそいつの話で盛り上がれる」というのがホンモノの証である。「意図的に誰も触れようとしない」というのは、変わり者ではなくただの腫れ物なのだ。
自分がどっちのポジなのか確認するため、自分不在の会合に盗聴器を仕掛けるという手もあるが「ガチの悪口」が入っている場合もあるので実行には踏み切れていない。
あまりにも選手層が厚すぎる我が実家に比べて、義実家は真っ当な勤め人が多く、変態無双をするならここしかないのだが、残念ながら私はまだ腫れ物の域を脱しておらず、私の仕事や生活に関してはここ数年誰も一切触れようとしない。
そんな終わった人間よりも話題の中心になるのはこれからの人間である。
年々死臭が強くなり、別の意味でマスク必須になってきた私の実家とは対照的に、夫の実家は子供が多く、ついに一番年長の姪たちが就職間近になってきた。
1人はすでに就職先を決め、もう1人は現在、汎用性の高い資格を取るため専門学校に通い、来年就職である。
就職の決まった姪は特にやりたいことはないので、就職できるところから一番給料と福利厚生が良いところを選んだそうだ。