辻 真先 ◈ 作家のおすすめどんでん返し 10

1話4ページ、2000字で世界が反転するショートストーリーのアンソロジー『超短編! 大どんでん返し』が売れています。執筆陣が、大ヒットを記念して、どんでん返しを楽しめる映画やアニメ、テレビドラマ、実話怪談など、さまざまな作品を紹介してくださいました! ぜひチェックしてみてください。


作家のおすすめどんでん返し 10
どんでん返しのその先に

辻 真先 

 山田風太郎の小説は、デビュー作から多くをリアルタイムで読みつづけた。ミステリ作家だからドンデン返しの妙に唸らされたものも数多いが、読後しばし茫然としたドンデン返しなら『外道忍法帖』がある。シリーズ中では忍者の登場人数が最大級で.三つ巴の乱戦模様を呈する。だからひとりあたりの描写が手薄で、中には柿の木将曹(名はうろ覚え)みたいに、一度も自分の忍法を披露しないまま死ぬ不運な奴がいたりする。それでも最後のオチは凄まじい。

 山田風太郎の小説は、デビュー作から多くをリアルタイムで読みつづけた。ミステリ作家だからドンデン返しの妙に唸らされたものも数多いが、読後しばし茫然としたドンデン返しなら『外道忍法帖』がある。シリーズ中では忍者の登場人数が最大級で.三つ巴の乱戦模様を呈する。だからひとりあたりの描写が手薄で、中には柿の木将曹(名はうろ覚え)みたいに、一度も自分の忍法を披露しないまま死ぬ不運な奴がいたりする。それでも最後のオチは凄まじい。

 時代は幕政確立以前(これも記憶が怪しい)、舞台は長崎(これはたしかです)。日本南蛮入り乱れ、色気と剣気も入り乱れる山風一流のエンタメ絵巻なのだが、お約束通り超人的忍者群は片端から、惜しげもなく死に果てる。約束通り全滅してしまって、どこがドンデン返しだよとおっしゃる人もいるだろうが、それにもかかわらず大ドンデン返しを読まされたぼくは、呆れ果てた。

 ミステリが好き、山風が好き。

 その自信をお持ちの読者なら、作者がしかけた巨大なオチを想像できるかも知れない。

 ここまでの拙文の中にも、ヒントはふんだんにバラまいてあります。『くの一忍法帖』のようにラストで作者のしかけた時限爆弾か破裂するタイプもあるが、スケールの大きさでいえばこちらが上だろう。もともとこのシリーズは、ミステリからはやや離れた地点で結晶しているのだが、古い山風ファンとしては列外の思想(規格に外れた人間は列外に立ってろ!と病身の山田は扱われた)をパロったような、ハミ出したどんでん返しを愛している。


辻 真先(つじ・まさき)
1932年愛知県生まれ。名古屋大学卒業。テレビアニメの脚本家として活躍後、72年『仮題・中学殺人事件』を刊行。82年『アリスの国の殺人』で第35回日本推理作家協会賞(長編部門)、2009年に『完全恋愛』(牧薩次名義)で第9回本格ミステリ大賞、19年第23回日本ミステリー文学大賞を受賞。20年『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』が、各ミステリーランキング1位に。

超短編!大どんでん返し

『超短編! 大どんでん返し』
編/小学館文庫編集部

現役医師・南 杏子の新刊『ヴァイタル・サイン』 冒頭ためし読み!
「推してけ! 推してけ!」第11回 ◆『ヴァイタル・サイン』(南 杏子・著)