スピリチュアル探偵 第15回

スピリチュアル探偵 第14回
待望の連載再開!
かえってきた探偵の前に、
パワーワード満載の霊能者、降臨!

 でも、一応マスコミの端くれである僕には効果は皆無。何より、そもそもオーラという、こちらからすると確認しようのないテーマが僕はあまり好きではないのです。それにもかかわらず、うっかりこの話題に花を咲かせてしまったのは、Tさんの話術の賜物なのでしょう。基本的にペースは常にTさんが握っています。

 その中で、Tさんは僕の前世についてもこんなことを言っていました。

「仕事のことでいうと、あなたは今よりもずっと昔、中世の頃のフランスでは、パン職人だったんですよ。その意味ではものづくりにも向いているのかも」

 一体いつの間に僕の前世を視たのでしょう。ちなみにこの前世というのもオーラと同様、言ったもの勝ちの世界。やっぱり確認しようがないので、「そうなんですか」としか言えません。ただ、ここでふと記憶に蘇ったことが……。

 当連載の第7回目でも触れたエピソードですが、僕は過去にも「あなたの前世はフランスのパン職人」と言われたことがあるのです。時代も場所もぴたり。この符合は何でしょう。

 もっとも、これだけ手当たり次第に霊能者をあたっていれば、時にはこうした偶然も起こり得るのかもしれません。数百年前の職業を語る際、うかつに特殊な仕事を持ち出すと、時代考証の面で齟齬が起きるリスクもありますから、パン職人は無難といえば無難です。

 それでも……うーん。検証しようがないことなので、心にもやもやが残ります。試しに「フランスのどの地域ですか?」とか「どんなパンを作ってたんですか?」などと食い下がってみましたが、「そこまではわからない」と一蹴されてしまいました。

 そんなこんなで、60分のセッションはあっという間に終了。大部分を仕事やオーラの話題に費やしてしまった気がしますが、最後にこんなことを言われました。

「あなたはもう少しおじさんになったら、2まわり下の彼女ができますよ」

 この時点ですでにそこそこおっさんなので、一体いつのことだよと思わんでもなかったですが、すぐに深掘りできなかったのは、なまじ脊髄反射的に喜んでしまったからでしょうか。「マジすか、そりゃ楽しみです」などとクールに取り繕ってしまいました。もうちょっと時期とか相手の素性とか聞いておけばよかった。まだまだ修行が甘いです。

感想戦もまた楽しいスピリチュアルセッション

 2万円の代金を支払い、お礼を言って部屋を出ると、ちょうど玄関で同じくセッションを終えた知人女性に出くわしました。僕らを見送るTさんとLさんは、実に仲睦まじく見えます。

 さて、スピリチュアルハウスを後にし、帰りの道中では「そっちはどうだった?」と感想戦が始まります。

 彼女は「すごく楽しかったよ。仕事のこととか家族のこととか、いろいろたっぷり視てもらえてよかった」と満足の様子。確かに僕が視てもらったTさんにしても、いかにもテレビタレント的なトークスキルの持ち主で、ストレスなく話せる座持ちのいい人でした。霊能者としての真贋をさておけば、楽しいひとときだったと言えます。

「ちなみに私、IKKOさんと同じオーラだとか言われたんだけど!」

 ……おいおい。これってお決まりのジョークだったのかよ。

「あと、『一緒にいらした彼は水色のオーラだったね』とも言われたよ」

 ほう? Tさんには青と言われましたから、一応、整合性はとれているわけです。ただ、僕ってこの日、普通にブルーのシャツを着ていたんですよね。2人そろって見た目のイメージに引っ張られたんじゃないかと、疑いたくなるのも致し方なしでしょう。

 試しにスマホでググってみると、青いオーラの持ち主は、秘書や通訳、教師などの仕事に向いているとの情報がヒットしました。少なくともTさんの言い分とはまったく異なっています。やっぱりオーラの世界はよくわかりません。

 ちなみに彼らが出演していたお昼の番組は今も続いており、視聴率も悪くない様子。しかし僕が知るかぎり、今はもう2人の出番はないようです。

 それでもきっと、今も仲良くあの家でセッションを続けているのでしょう。再び訪ねる機会があったなら、今度は円満な関係の秘訣を相談するほうが実利的かも、などと思ってしまう離婚経験者の僕なのでした。

(つづく)

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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