スピリチュアル探偵 第18回
〝魔女っ子〟の案内で
恐怖体験@鳥取!
本物の霊能者を探し求めて東奔西走。こんな活動を15年以上も続けていますと、霊能者と普通に友達関係ができあがってしまうことがしばしばあります。数年前に深夜の歌舞伎町で出会った、通称「魔女っ子」さんもその1人。
彼女の存在についてはもともと、友人から「俺のフェス仲間にとんでもないヤツがいるよ」と伝え聞いてはいました。いわく、「魔女っ子ってあだ名で呼ばれてるんだけど、何でも言い当てちゃうもんだから、噂が噂を呼んで、ちょっと前まで◯◯TV(※衛星放送の某音楽専門番組)で占いコーナーを持っていたんだ」そうですから、これは気になる案件です。
なんでもその魔女っ子さん、鳥取県在住ながらフェスなど音楽系のイベントに合わせてたびたび東京にやって来るとのこと。これはぜひ、お会いしなければ。
ところが、なかなか機会が得られないまま2~3年が経過。ようやく邂逅を得たのは、一昨年の春先のことでした。仲間と新宿で飲み明かしていたところ、たまたま入った酒場でその友人が魔女っ子さんと飲んでいる場にばったりと出くわしたのです。
縁は異なもの味なもの。スピリチュアル云々はさておき、単なる酒場ノリで未明まで語り合ったのを機に、彼女との交流が始まりました。今回はそんな魔女っ子さんのお話です。
〈CASE.18〉噂の魔女っ子と行く、山陰「怖場」ツアー!
「鳥取においでよ。トモキヨが喜びそうな怖場がたくさんあるから案内するよ!」
歌舞伎町での別れ際、魔女っ子は僕にそう言いました。怖場(こわば)とは聞き慣れない言葉ですが、いわゆる心霊スポットを指している様子。
僕はとくに心霊スポットに関心があるわけではないのですが、名うての霊能者と行くツアーとなれば、好奇心は止められません。おまけに鳥取は大好きな地域のひとつで、毎年必ず一度は訪ねている旅先。そんなわけで、首尾よく怖場ツアーは実現しました。
よく晴れたある夏の日。こちらの到着時刻に合わせて、鳥取砂丘コナン空港という冗談みたいなネーミングの空港まで迎えに来てくれた魔女っ子。「久しぶり!」と挨拶を交わして彼女の車に乗り込み、僕らは鳥取県中部エリアへ向けて出発しました。
歌舞伎町ではだいぶ深酒をしていたこともあり、どんなやり取りをしたのか記憶がいささか曖昧。そもそも彼女の腕前についても未確認のままです。そこでハンドルを握る魔女っ子に対し、ジャブ程度にリサーチを開始することに。
「――魔女っ子は占い師を仕事にしてるんだっけ?」
「そうだよ! 今はもう、知り合いの紹介でしか仕事は受けてないけどね」
「そうなの? それはどうして?」
「だって疲れるじゃんよ」
「そういうものなんだ。じゃあ、主に鳥取県内で活動しているの?」
「県内はもちろんだけど、けっこうあちこち呼ばれるよ。最近も大阪まで行ってきたばかりだし」
つまり、看板を掲げているわけではなく、口コミで活動するタイプの霊能者。ちなみにファンキーな物腰も手伝って30代半ばくらいに見えますが、実は50歳を超えていると言うので驚きました。魔女ってそっちの意味だったの?
「ちなみに、トモキヨはどういうタイプの怖場が好きなのー?」
会話の隙間に、人生で初めて受ける質問を差し込まれました。
「……え。とくに好みというのは考えたことがなかったけど。逆に、鳥取にはどういうスポットがあるの?」
「この辺、ヤバい所たくさんあるよ! たとえば◯◯町には××ってお寺があって、この一帯はもう遠目からでもいろいろ視えるし、□□エリアの△△山なんて、一歩足を踏み入れたらすぐ憑いてきちゃうから絶対に行かないって決めてる。他にも……etc」
早口でまくし立てるように周辺の〝怖場〟事情を語る魔女っ子。とりあえず行き先については一任することにしましたが、僕は一体どんな所へ連れて行かれてしまうのでしょうか……?
友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。