スピリチュアル探偵 第19回

スピリチュアル探偵 第14回
スピリチュアル探偵の新境地!
ヒーリング・クッキングに挑戦。

折しものコロナ禍で、人々の働き方や生活様式は大きく変わりました。僕のような物書き稼業の者にしても、取材や打ち合わせがオンライン化され、移動の負荷は少なからず軽減されています。

そうして生まれた時間のゆとりを使って、霊能者とオンライン対決を試みるのも一興なのですが、リサーチしても今のところ本物臭のする案件はなし。というよりも、電話やZoomで済まされてしまうことに、どうも抵抗があるのです。遠隔で数万円を支払うのであれば、やはりそれなりの確度がほしいのが本音。

結局、最近はリモートで生まれた空き時間を生かして、柄にもなく自炊に励んでいたりします。もともと料理など一切やらない人間なので、何を作っても見栄えがイマイチですが、好きなものを好きな量だけ作れるのはなかなか楽しいもの。

そこでふと甦ったのが、数年前の記憶です。僕は過去に一度だけ、料理を習いに行ったことがあるのです。といっても目的は料理そのものではなく、スピリチュアルな料理人と対面することにありました。

というわけで、今回は「料理×スピリチュアル」の奇妙な世界にご案内致しましょう。

〈CASE.19〉不思議な料理人が作るヒーリングフードの世界とは!?

我が家の最寄り駅からほんの数駅のご近所に、欧風料理を教えてくれる先生がいると聞いたのは、そろそろセミの声が鳴り止みそうな初秋の頃でした。

しかし当時の僕は、食事はもっぱら外食ばかり。料理には微塵も興味はありません。それでもその先生に興味を持ったのは、その先生が「ヒーリングフード」の大家であるとの触れ込みだったためです。

ヒーリングフードとは聞き慣れないジャンルですが、その先生が掲げる定義によれば、「霊的な力を宿す食材を、霊的な手法で調理することで、食事を通して心身のバランスアップと免疫アップを目指すもの」なのだとか。

そんな食生活の効果なのか、自身も霊的な力を宿しているというその先生、2カ月に1度だけ自宅に数名を募り、ヒーリングフードの料理教室を開催しているとのこと。いろんな意味で香ばしさを感じさせる案件ですが、いつものセッションと違うのは、たとえインチキであっても腹だけは満たせる点。これは魅力的です。

料理教室という未知の空間に、男1人でアタックするのがどうにも気恥ずかしかったので、スピリチュアルな分野に理解がある女友達のA子さんに同伴を頼み、さっそくヒーリングフード教室に参加を申し込みました。

幸いにして2名分の空きがあるそうで、予約はスムーズに成立。当日は1万2000円の会費(食材費込みだそうです)とエプロンを持参するよう言われました。

しかし、エプロンなんて僕にとってはこの世で一番縁のないアパレル。そもそもどこで買えばいいのかもわからず、早くも心が折れそうになりましたが、近頃は百均でも売ってるんですね。エプロンを購入するという体験からしてもう新鮮で、早くも新しい扉が開かれた思いがしたものです。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

三浦裕子『リングサイド』
平野貞夫『衆議院事務局 国会の深奥部に隠された最強機関』/欲望とエゴが渦巻く権力闘争の舞台裏