スピリチュアル探偵 第2回

スピリチュアル探偵 第2回
霊能者を求めて西へ! 一見、キャバ嬢風な彼女は本物なのか?


知らずにチェックインしていたお化けホテル

 最初のうちこそ、男性陣からの「こいつ誰?」的な視線がちくちく痛かったものの、考えてみれば旅先で地元の女子と飲めるなんて僥倖もいいところ。後述する理由によりこの時期はだいぶご無沙汰していたものの、僕は本来、合コンが嫌いではありません(キリッ)。

 そもそも関西の合コンなんて初体験。さぞコテコテのノリではっちゃけるのだろうとワクワクしていましたが、実際はそうでもなく、男性陣はわりとおとなしめ。むしろ女性のほうが元気で、東京から突然やってきた僕に興味が集まり、なかなか気分が良かったのを覚えています。

 そして開宴から2時間ほど経った頃──。それなりに打ち解け、ほどよく酔いがまわってきたタイミングで、男性の1人が僕に「そういえば自分、今日どこ泊まるん?」と聞いてきました。

 僕がおんぼろホテルの名を告げると、数名が「おお」と色めき立ち、ニヤニヤした顔をこちらに向けました。

「ん、何かあるんですか?」
「いや、そのホテルって、こっちでは有名なお化けホテルだから……(笑)」
「え、出るの?」

 すると他の男女も「こっちではわりと有名やんなー」「おれは絶対に泊まりたくない」などと口々に言い始めるではありませんか。

 すでにチェックイン済みの僕としては胸中穏やかではなかったのですが、他人の不幸は蜜の味。これを機に怖い話大会が始まってしまい、場は思わぬ方向に盛り上がっていきました。

オーラの色から過去・現在・未来を霊視

 それぞれがひとしきり手持ちの怖い話を出し切ったあたりで、女性陣の1人が隣の女性を指差しながらこう言いました。

「そういやこの子、けっこう視えんねんで」

 おもむろにスポットがあたったのはユカリさん(仮名)という女性。仕事は歯科衛生士か何かだったと記憶していますが、どちらかというと水商売風の派手な服装で、キャバ嬢というよりは高級クラブにいそうな感じ。率直に言うと、なんかエロいのです。

 それゆえ敷居の高さを感じさせてもいたユカリさんですが、きっと他の男連中もずっと彼女が気になっていたのでしょう。「視える」などというパワーワードが呼び水となり、男性陣の質問がユカリさんに集中します。「え、幽霊とかが視えるん?」とか「おれの前世占ってよ」とか「おれ、いつ彼女できる?」とか……。

 当のユカリさんはといえば、自分に注目が集まるのは満更でもないようで、ひとつひとつの質問にわりと丁寧に答えていました。聞けば、紹介制でたまに有料カウンセリングも行なっているのだそう。

 つまり相手はプロ。ならば僕も参戦しないわけにはいきません。場が落ち着くのを待ってから、スピリチュアル探偵、出動です。

「──ユカリさんは、具体的には何がどう視えてるんですか?」

 前世だ何だと無邪気に盛り上がっていたところで、急にシステム面に言及したことで、彼女は少し居住まいを正したように見えました。そしてこう答えてくれたのです。

「オーラというか、人が発している色が視えるの。言葉で入ってくるわけではないんやけど、その人の今の状況とか、過去とか、これから向かう方向がぼんやりと伝わってくる感じかな」

 ほうほう。これまで僕が立ち会ってきたオーラ視える系の霊能者と、およそ言い分は合致しています。これは期待できそう。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

今月のイチオシ本【歴史・時代小説】
伊藤朱里 × 島本理生 『きみはだれかのどうでもいい人』刊行記念対談