スピリチュアル探偵 第5回

スピリチュアル探偵 第5回
またしても東北は福島で調査!
しかも、今回は同伴で見てもらう
ドキドキの体験!?


やって来ました僕のターン。果たして……

 30分ほど経った頃でしょうか。マダムはひとしきりSさんにアドバイスを送ると、僕のほうに向き直り、「じゃ、次はあなたね」と、あらためて氏名と生年月日が書かれた紙に目を落としました。

 一応、いつものように仕事・健康・結婚という3大テーマを携えている僕ですが、まずはマダムの出方を待つことにします。

「あなたも出版関係のお仕事かしら?」
「そうです。僕は出版社勤めではなく、フリーの立場なんですけどね」
「そうよね、会社員には見えないわね」

 それはスピリチュアル的な意味なのか、それともカタギに見えないと言いたいのか、一体どちらなのでしょう。

「あなた、体調はどう? いま胸のあたりに痛みを感じたりしてない?」
「あ、じつは最近たまに、シクシク痛むことがあるんですよ。大丈夫ですかね、これ」
「私は医者じゃないからわからないけど、不安だったらちゃんと病院で診てもらわないと」

 あまり気にしていなかったのですが、このマダムに指摘されると、俄然、不安になってしまいます。

「でも、あなたは基本的に頑丈だから大丈夫。大病することは当面なさそうね」
「ホントですか?」
「うん。ただ、ここのところちょっと体力的に無理しているみたいだから気をつけて」

 たしかにこの時期は大きな仕事が重なっていて、平常時よりも疲労と睡眠不足が蓄積していました。でも、これもたいていの社会人に当てはまりそうなアドバイスに過ぎません。僕もSさんみたいにもっと、「なんでわかるんですか!」と驚きたいのですが……。

 そこで、「僕、このまま今の仕事を続けていて大丈夫ですかね?」と、こちらから水を向けてみることに。

「そうね、問題ないと思うけど、不安に思っているならもう少し詳しく見てみましょうか」

 マダムはそう言うと、レジの下の棚から分厚い本を取り出して、僕の誕生日に相当するページを探し始めました。よくわかりませんが、生まれ年(干支?)などから人の運勢のベースが細分化されているようで、それを示しながら「今あなたはこういう運気の流れにある」とか、「何年から何年までが比較的いい時期になる」といったことを教えてくれました。でも、僕が欲しているのはそういうヤツじゃないんです。

 恋愛面に関しても、「あなたにはこういうタイプの人が合うと思う」、「仕事もいいけど、お相手の方と向き合う時間を増やしてね」などといった、その場で答え合わせのしようがないアドバイスに終始。ありがたいお言葉ではありますが、先ほどまでのキレッキレなマダムはどこへ行ってしまったのか。

未来に大きな希望を感じさせるマダムの言葉

 その後もあの手この手で対話を試みましたが、「なんでわかるんですか!」と驚かされる機会はついぞ得られず。もしかして、Sさんのターンでマダムはもう疲れてしまったのでしょうか。だとすれば、2人セットで面談することの思わぬ弊害です。

「とりあえず、しばらくこの仕事を続けていていいみたいなので安心しました」

 レンタカーの返却時刻が気になり始めたので、あきらめてシメの言葉を口にしてみた僕。すると最後に──。

「私、出版の仕事のことはよくわからないけれど、あなた将来、大きないいものもらうわよ」
「……え、何だろう。それって賞とかそういうものですかね」
「わからないけど、そういう類いのものだと思う」
「じゃ、もしかしたら直木賞とか芥川賞とか、あるいはノーベル文学賞とか?」
「そうかもしれないわね(笑)」

 思わずニンマリ。これは最低でもベストセラーくらい出るに違いありません。内心、「キターッ!」と舞い上がりましたが、最後の(笑)がちょっと気になります。

 少なくとも、マダムのこの言葉から数年を経た今、予言的中の兆しはありません。それでも僕としては、マダムが本物であることに一縷の望みを託し、予言成就の日を信じて待ち続けているのでした。

(つづく)

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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