辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第11回

辻堂ホームズ子育て事件簿
授乳時間は90分!?
将来の食費が心配になる、
大食い育児の実態!

 2022年1月×日

 母乳飲みすぎ妖怪。

 誰のことかって、うちの子どもたち2人ともである。娘も、息子も。

 先月の1か月健診で、息子は体重4200gを記録した。その際に、助産師さんとこんな会話をした。

「今日の健診で、もう5000gの子がいたんですよ」「えっ! 大きい! 生まれたときはどのくらいだったんですか?」「3800gです」「……あれ? うちの子……」「そう。2700gでしたよね。つまり辻堂さんのお子さんが、増え幅本日ナンバーワンです」

 おめでとう、息子。生まれて早々、人生初の一等賞を獲りました。

 助産師さん曰く、「1日あたり60g増えてます。40gや50g台はたまに見ますけど、60gはなかなか……」。訊いてみると、健康に育っているとされる基準は「30g以上」らしい。まさかの倍。まったくの想定外だった。

 だって、密かに心配していたのだ。いくら母乳をあげてもすぐに泣かれてしまい、頑張って頻回授乳を試みるものの、最終的には腹持ちのいいミルクをあげないと静まってくれない、ということが毎日必ずある。つまりこれは、母乳がちゃんと出ていないのではないか。おかしいなぁ、娘はほぼ完全母乳で育てていたのに──、と。

 そりゃ、普通の赤ちゃんの倍のペースで成長しようとしていたのなら、母乳だけじゃ足りないわけだ。やきもきした時間を返してほしい。健康すぎるほど健康な息子よ。

 ちなみに、生後1か月も終わりに近づこうとしている今は、5000gを優に突破し、成長曲線の上のほうを突っ走っている。頼もしい限りだ。

 以前のエッセイで娘が大食いで胃腸が強いという話を書いたけれど、息子もその素質がありそうな気配がぷんぷんする。何せ、生まれてすぐの入院中に、助産師さんにこんな言葉をかけられたのだ。娘は「この子全然寝ないね、ってナースステーションで話題になってたんですよ! ミルクを足しても『あたし飲みましたっけ?』みたいな顔をして」。息子は「ずっと起きてて母乳もミルクも飲みまくる子がいるって、ナースステーションで噂になってます」。

 言い回しは違えど、ほぼ一緒ではないか。産んだ病院が違うのに助産師さんに同じことを言わせるとは、なんて恐ろしい子どもたち。

 その後娘が目を見張るほどの健啖家に育っていることを思うと、将来の食費が今から心配だ。私も夫も食欲は人並み程度のはずなのに、二人の遺伝子が合わさると、必ず大食い人間が誕生するということなのか。これぞミステリー、生命の神秘……。


*辻堂ゆめの本*
\第24回大藪春彦賞受賞/
トリカゴ
『トリカゴ』
東京創元社
 
\第42回吉川英治文学新人賞ノミネート/
十の輪をくぐる
『十の輪をくぐる』
小学館

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荻原 浩 × 辻堂ゆめ
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\毎月1日更新!/
「辻堂ホームズ子育て事件簿」アーカイヴ

辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』で第42回吉川英治文学新人賞候補、2022年『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞を受賞した。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』など多数。

和田靜香さん インタビュー連載「私の本」vol.17 第3回
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第176回