辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第11回「映画1本分の母乳」
将来の食費が心配になる、
大食い育児の実態!
母乳は吸われれば吸われるほど体重が減って産後ダイエットが進むから、いくらご飯やお菓子を食べても太らないという恩恵はあるのだけれど、物事には限度というものがある、というお話。
さて、そんな娘の近況を報告しておくと、先日夫の誕生日祝いで焼き肉店に行った際、1歳10か月の彼女がたいらげた量がこちら。
・クッパ 1人前
・石焼ビビンバ 0.7人前
・チャーハン 0.6人前
・カルビクッパ(中辛) 0.7人前
以前よりパワーアップしている。その上、キムチも美味しそうに食べていた。さすがに塩分過多なので途中でストップをかけたけれど、娘の胃袋の底知れなさに改めて恐怖した夜だった。本当なら親のご飯を1歳児に取り分けるはずが、逆に私が取り分けてもらっていたのだから異常である。あまりに驚いて実家の両親にラインでこのことを伝えると、父からこう返信があった。『クッパ、ビビンバ、あとマッコリがあれば私と同等だね』……おじいちゃん、あと18年待って!
もちろん、こんな暴食を許すのは特別な日のみであることを補足しておく。普段は乳幼児健診などでの一般的な指導内容どおりの量を与えていて、不思議とそれに娘が不満を示すことはない(ただし、周りの人間が同時に食事を終えている場合に限る……って、このことは胃腸炎の回にいろいろ書きましたね)。
子どもが食べたいだけ食べさせるのがいい、という考え方もあるのだろう。だがうちの娘の場合、それをしたら目も当てられない大惨事になりそうだ。あと、これに関しては、合気道の元学生チャンピオンである夫の元会社の先輩からもらった、「身体が一気に成長して基礎ができる2歳くらいまでは、太らないよう気をつけたほうがいい」という助言を、一応大切にすることにしている。親が食事や体重の管理を適切にしなかったせいで、将来子ども自身が望まない体型になるのは避けたいからだ。難しい問題だけれど、先のことを考えて自分の欲望、例えば食欲、を調整することができないうちは、そこに気を配ってあげるのも親の役目なのではないかと感じる。
ちなみにこのアドバイスをくれた合気道元学生チャンピオンの方、前々回のエッセイに登場した1900坪の森を購入した先輩と同一人物だ。いささかキャラが濃すぎやしないだろうか。あ、これは余談だけれど、夫が森でキャンプ中に水路に転落したとここに書いたところ、夫には義母から心配の連絡が入り、某担当編集からは息子への出産祝いとともにUSB充電式のヘッドライトが届いた。夫へのクリスマスプレゼントだという。
本当にありがとうございます。今後、夫が森に行く際は必ず持たせます。
(つづく)
東京創元社
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「辻堂ホームズ子育て事件簿」アーカイヴ
1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』で第42回吉川英治文学新人賞候補、2022年『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞を受賞した。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』など多数。