福徳秀介さん(ジャルジャル)第1回 インタビュー連載「私の本」vol.11

福徳秀介さん

「この本と出逢えたから、いまの自分がある」をテーマにお話を聞くこの連載。今回は、『キングオブコント2020』で見事、優勝を果たしたお笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さんです。初の小説となる『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を刊行。その挑戦に込めた想いについて伺いました。


4年かけて書き上げた初小説

 この小説を仕上げるまでに、ふと気づいたら4年もかかってしまいました。小説を書いてみたらどうか、と周囲から勧められたこともあって始めたんですけれど、なんだかんだ手直しをしていたら、物語ができるまでに2年も経ってしまっていたんです。

 その後にこの小説を出版するというお話をいただいたのですが、そこからさらに2年かかりました。編集の方からは、「直したほうがいいところがまだあるので、1000本ノックだと思っておいてくださいね」とまずガツンと言われまして。最初は細かいところの指摘だけだったんですけど、あるとき急に、ごっそり半分くらいの6万字を削除されてしまって。「えっ、6万字?」と一瞬、というか2日くらいは「どうしよう」と頭が真っ白な状態でした。でも新たな気持ちで書き始めたら、そこから本当にぶわーっと言葉が生まれてきて、また別の6万字を紡ぐことができました。

 この4年間は、仕事の前後やあい間に、とにかく毎日書いていたんです。どんなに忙しいときでも毎日必ずどこかは直しを入れていましたね。

異性を好きになることで、人生の物語が動き出す

 もともとは100%恋愛小説のつもりだったんですが、6万字没収されたことによりガラッと物語も変わりました。

 大学2年生の「僕」は、入学前に憧れていた花のキャンパスライフとはほど遠い、冴えない毎日を送っています。青春をそれほど謳歌できているわけでもなく、友人もたった1人しかいないんです。

 そんな「僕」がある日、教室で学生たちの輪を嫌うように凛と振る舞う女のコの姿を見かけて、だんだん彼女に惹かれていきます。初デートにもなんとか成功して、これから楽しい日々を送れるかと思った矢先に、さまざまな出来事が起こる、といった話です。

 異性を好きになって悩んだり、楽しんだりすることで新たな物語が始まっていくので、ある意味、恋愛小説的な部分は残っていると思います。

同じお笑い芸人であり、小説家でもある又吉直樹さんのこと

 文章を書くことは、過去にも何度か経験しています。「マンスリー吉本」という吉本興業が出版していた雑誌があって、そこに又吉直樹さんと僕が連載を持っていたんです。

 ふたりの連載が見開きで掲載されていたんですけれど、それが本当に嫌で。又吉さんがいかつ過ぎてどうしようって、いつも自分なりに考えて。まったく違うベクトルでいこうとか、作戦を練ったりもしました。僕は芥川賞なんてとてもとても無理だとは思いますけれど、ページの真横でいつも見ていたので、又吉さんのことは意識している部分はありますね。

 それから過去には、『まくらのまーくん』という絵本で「タリーズピクチャーブックアワード絵本大賞」をいただいたり。いとこが絵を描いているのは知っていて、偶然ネットでこのコンクールのことを見て、「僕が話を作るから絵を描いてよ」という本当に軽い気持ちで書いて応募したら、大賞を取れてしまったという感じでした。

座右の銘の言葉「考えるな。感じろ」

 僕はブルース・リーが大好きで、小学生のときに観た主演映画『燃えよドラゴン』で言っていた「Don’t think. Feel(考えるな。感じろ)」がずっと心のなかに生き続けているんです。

 その言葉どおり、この小説も基本的には考えずに書きました。一般的にはまずプロットを作って、それから小説を書くべきだという意見もあると思いますけれど、それは基本無視して、感じるがままに書き進めていったんです。

 頭のなかだけでなく、身体中に潜んでいたいろんな感情が、言葉になりたがっていると感じました。

 僕はいままでの人生で何度もこの「Don’t think. Feel」の言葉で、自分を鼓舞してきたんです。たとえば小学校の夏休みの自由研究も、クラスのみんなの前で発表しなければあかんというのですごく緊張したけれど、「感じるままに言うたらいいやん」と思えましたし。

 その言葉と出逢えてなかったら、僕の人生どうなってたんやろう、この言葉のおかげでいまの自分がある、とすら感じられるほどで。僕にとって大事な言葉とは、そんなふうに自分の背中をポン、と押してくれるもの。だから読者の方にも僕の小説を読んで、そんな言葉と出逢ってもらえたらうれしいなと思います。

(次回へつづきます)
(取材・構成/鳥海美奈子 撮影/田中麻衣)

福徳秀介(ふくとく・しゅうすけ)
1983年生まれ、兵庫県出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。TV・ラジオ・舞台・YouTube等で活躍。キングオブコント2020優勝、13代目キングに。福徳単独の活動として絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズピクチャーブックアワード大賞を受賞。絵本『なかよしっぱな』(2019)刊行。本作品が、小説デビュー作となる。


「私の本」アーカイヴ

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
福徳秀介


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「デビュー小説の裏側、全部話しちゃう奴」


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