◎編集者コラム◎『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』瀬戸内寂聴

 ◎編集者コラム◎

『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』瀬戸内寂聴


『絵草紙屋万葉堂 初春の雪』篠 綾子

「大正11年生まれで、いま96歳ですけど、関東大震災も太平洋戦争もこの目で見てきました。私が生まれ、生きてきた時代が描かれていて、もう一度人生を生き直した映画のようだったわ。私の小説"ここ過ぎて"が原作だったら、もっと面白い映画になっていたと思うけど(笑)、思ったより、とてもいい映画。反戦映画として若い人たちに観てほしいわね」

 連日40度近い酷暑が続き、屋外に出るだけで汗が噴き出し、ジリジリとした太陽が肌を焼く7月の京都・太秦。松竹試写室で、新春1月11日に公開される映画『この道』の試写を鑑賞した瀬戸内寂聴先生は開口一番こう語った。

 映画『この道』は童謡誕生100年を記念して制作され、国民的詩人・北原白秋と作曲家・山田耕筰の友情を軸に、人妻と不倫し、姦通罪で逮捕されるなど、様々なスキャンダルにまみれながらも、素晴らしい作品を書き続けた人間味溢れる天才・北原白秋の素顔を描いた人間ドラマ。

 この日は北原白秋を演じた大森南朋さん、山田耕筰役のAKIRAさんと瀬戸内先生、秘書の瀬尾まなほさんによる映画『この道』に関する座談会(その内容は11月29日発売の単行本『この道』に掲載)を収録する日だった。

「そもそもこの映画の原点は瀬戸内先生の『ここ過ぎて』。この小説にとてもインスパイアされました」(映画の総指揮を執る間瀬エグゼクティブプロデューサー)。

 丹念な取材を元に瀬戸内先生が1984年に発表した渾身の小説『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』。映画とは異なり、稀代の天才を陰で支えた俊子、章子、菊子という三人の妻たち、なかでも壮絶な人生を送った二番目の妻・章子に焦点をあてて描いた長編小説。

 不倫して姦通罪に問われた一番目の妻・俊子のその後は?

 白秋が没して4年後の1946年暮れ、大分県香々地の土蔵で一人ひっそりと息を引き取った二番目の妻・章子の一生は? 二人の子を産み、白秋の最期を看取った三番目の妻・菊子はどんな女性だったのか?

 この作品は素晴らしい創作の裏側にはそれぞれに魅力的な女性たちの存在があったという「真実」を伝えてくれる。

 まさに読んでから観ても、観てから読んでも、胸を打つ作品です。

──『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』担当者より

syoei

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