悪童(ヤナワラバー)は不滅だ! の3冊
『キジムナーkids』上原正三
ウルトラシリーズ・戦隊シリーズ等の特撮作品で知られる脚本家、上原正三さんの自伝小説。
時代は沖縄戦後、舞台は本島南部。戦果アギヤーを繰り広げる、悪ガキどもの逞しさを描く。戦果アギヤーとは直訳すると「戦果をあげる者」。ここでは米軍からの物資強奪、また、それを行う者を指す。虐げられた民衆が、支配者の資産を奪取するという意味で、義賊的な色あいを含む言葉だと思う。悪童達の大活躍を見逃すなかれ。反面端々に差し込まれる彼らの過去のエピソードは、一つずつが重く、本編の活劇描写との対比が際立つ。闇。しかし闇が強ければ、光もまた強い。キジムナーkidsは力づよく輝く。
『あの瞬間、ぼくは振り子の季節に入った』荷川取雅樹
宮古は──沖縄本島もそうだが──本土のTVカメラ的な目線では"青い海・青い空"だけで語られがちだ。
でも、当然だけど、そこにあるのは"青い海・青い空"だけじゃない。更に言うと「だけじゃない」の部分こそが、何というかとっても大事であります(というのを、働きながら暮らしながら色んな方々に教わり学び、道半ばである私)。本作は、多様な「だけじゃない」の一部を、更に濃いめに抽出、煮出したかのような青春小説。いまから約40年ほど前、島がリゾート化していく少し前の宮古。街っ子の高校生は全国何処の高校生とも変わらず、やっぱりアホだった。繰り返されるのは放課後。ループする日常。果てなき与太話。友情あり・努力あり・勝利なし(あり?)。70~80年代の宮古島都市部の風景が、まるで自分の記憶にあるかのように眼に浮かぶ。
『黙示録 上・下』池上永一
1712年、琉球王国。王国の栄華は頂点へ達しようとしていた。
国交を、芸をもって執りおこなうため、来琉諸国をもてなすため、強力な芸能集団が発展していく。この時代を背景に、天才的な踊りの技を持つ少年二名が現れる。了泉と雲胡。破天荒な暴れん坊の了泉、常に冷静沈着でクールな雲胡。生まれも育ちも性格も、全てが対照的な二人は終生のライバルとなる。彼らの運命やいかに……泣く子も黙る一大エンタテインメント。説明不要。必読。