田島芽瑠の「読メル幸せ」第63回
第63回
7月になりました🌕
今年の夏は特に暑くて溶けそうです、って毎年言っている気がします……。
先月久しぶりに実家へ帰りました。流れる時間は同じはずなのに、なんだかとてもゆっくりに感じて、でも振り返るとあっという間な10日間でした。母と映画を観たり弟とカラオケへ行ったり、父の日のプレゼントを買いに行ったり、父にケーキをプレゼントしたら父は次の日健康診断でその日には食べられなかったり(笑)、これまでの23年という人生において指で数えられる程しかしたことのないお昼寝をしてみたり……。せかせか過ごしていた日々に穏やかな空気が流れ、心身共に落ち着けた時間となりました。
東京へ帰る飛行機の中は「あーこのままずっと実家にいたいな」とも思ってしまいます。ですが、帰ったら会いたい友達もいるし、美容室の予定もあるし、ジムもピラティスも行きたい、と考えていると、東京でもやりたい事がいっぱいあることに気づきました。「あぁ、私の生活は東京にもあるんだな」と、どちらも居場所になっていることを感じてなんだか泣きそうになりました。時にはゆったり過ごすのもいいですね。予定を詰め込むのがもはや癖のようになっていましたが、実家に帰ったおかげか、部屋で動画を見ながらゆっくりするなど一人の時間も楽しめるようになりました。それまでは本当に一人が寂しくていつも友達と会ったりしていたので、ちょっと大人になった気持ちです😂
さて、今回紹介する作品はこちら!
原田ひ香さんの『人生オークション』です。
一つのお話かと思いきや、「人生オークション」と「あめよび」の二本立てでした!人と人とのすれ違いが大変リアルに描かれています。救いがあったりなかったり、モヤモヤしたりスッキリしたり…どちらもラストの展開までどうなるのだろう?と思いながら読み進めました。
「人生オークション」
大学卒業後の就職先も決まらず、何もかも上手くいかない毎日に卑屈になったりイライラしたりと空回りする姪と、不倫問題で謹慎中だが事の重大さをまるでわかっていない素振りのマイペースな叔母の、化学反応が面白いお話。ある日姪が叔母の引っ越し作業を手伝うことになるのですが、狭い家には入りきらないほどの荷物。片付けるためにも段ボールの中身を売ることにした2人は初めてのオークションに挑戦します。この事をきっかけに2人のプライベートも整理されていき……。
私自身モヤモヤした時や台詞を覚える時など頭の整理が必要な際、部屋が散らかっていると集中できないのでまず部屋を綺麗にするようにしています。そうすると見えてくるものがある。頭の中をスッキリさせるためには自分の環境を整えることが大事だなと今回改めて思いました。
ただ、綺麗にするのは時間がかかるのに汚くなるのは一瞬だから不思議ですよね😂
「あめよび」
こちらはすれ違うカップルのお話。
いやー、とてもモヤモヤしました。ラストも「どういうこと!?」と気になる終わり方で、「人生オークション」とは対極的。もうすぐ30歳になる結婚したい女性と、その女性が好きだけど結婚はしたくないと言う、2つ年下の男性。5年以上付き合った上で男性側が結婚を拒絶するのには、どうやら理由があるようで……というお話。もし私がこの女性だったら、と考えながら、感情移入して読んでしまいました。意を決して女のほうから結婚しようと言ったのに、したくない理由をきちんと説明してくれないし。そのこだわりはなんだろう?って、彼女が可哀想に思えてしまいました。私ならすごく落ち込むし、腹立たしくて怒ってしまうと思います。20代後半からの貴重な時間を一緒に5年も過ごしているのだからその責任はないのかと。どんな理由があるにせよ、この先も結婚できないという意思を早めに彼女に伝えるべきだったのではないかと感じました。
巻末に収録された斎藤美奈子さんの解説を読むことで、新たな見え方を発見して、物語の面白さを改めて感じました!男性に対して終始モヤモヤしたり腹立たしく感じていたのは、私が子供すぎるからかもしれないし、物語自体が少し大人な世界の話なのかもしれない。それとも私が女性だからなのでしょうか。まだ周りで結婚する人も少なく、結婚という響きさえリアルに感じられない私だからこそわからなかったのかもしれないな。
この本を読んだら、みなさんもぜひ解説まで読んでいただきたい(ただし、必ず読む前ではなく読んだあとで!)。どちらのお話も毛色が違うからこそ、1冊の中で全く異なる感情を抱くことができました。読み手によってもきっと感想が違うので、もしかしたら、「あめよび」の男性に共感する方もいるのかもしれません。結局、登場人物にも私達にも人それぞれの価値観がある。人間って難しい、でもそれが面白い生き物ですね。皆さんの感想も聴いてみたいです。なんだか、色々な本の感想を言い合うイベントをしてみたいなとふと感じました😂 いつか叶いますように。
良い本の旅を。田島芽瑠でした。
(次回は2023年8月中旬に更新予定です)