田島芽瑠の「読メル幸せ」第82回
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第82回
2月になりました🎏
去年は桜が咲くのが遅かったですが、今年は気温が暖かくなるのが早い気がするので3月頃には咲くでしょうか。卒業式に間に合うといいですね。鼻がむずむずしてくると春の訪れを感じます😂
私事ですが、先月の誕生日で25歳になりました。「アラサーだね」なんて言われて、人生まだまだだけどもうしっかり〝大人〟なのだと思うとちょっと寂しく感じます。子供でいられる時間ってとても短くて貴重なんですね。子供の頃は無敵だったものが怖くなったり、大人になればなるほど自分も周りもややこしくなっていきます。先日、鈴木おさむさんとお仕事でご一緒させていただいた際に「人間って怖いですよね。人を信じるって難しいです」とお話しすると「そうだよ。だけど信じるからこそ面白いんじゃん」とおっしゃっていて、人間として生まれたことの意味を考えさせられました。
そして、そんな事を考えている時にこの本に出合ったんです。
根本宗子さんの『今、出来る、精一杯。』という作品です。
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あるスーパーで働く人々の〝めんどくささ〟が詰まった群像劇。こうやって作品として読むと「思っている事をそのまんま伝えたらいいじゃん!」と簡単な事のようにも感じます。実際、相手はこう思っているのだろうと勝手に思い込んで、対話する事なく、すれ違ってしまう事なんて日常茶飯事で、相手が考えている事なんてちっともわからない。人と向き合うという事がどれだけ難しい事か、という事を痛感しています。子供の頃は「ごめんね」で済んだことも、大人になると壁ができてしまったり。どんなに喧嘩しても翌日には学校で会えたあの頃と違って、疎遠になるともう会う機会が生まれないのが大人なんですよね。そもそも大人になって喧嘩するって事がなくなってくるじゃないですか。〝関わらない〟という選択肢ができるから。
でもこの作品は〝人間と向き合う事を諦めないで〟と伝えてくれている気がするんです。
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12人の登場人物が出てくるのですが、誰かの生き方に自分と似ているところがきっと見つかると思います。私は久須美杏ちゃんの立ち回りが自分と似てるなと感じました。時々、誰かの1番になりたくなるんです。でも、彼氏がいたり、親友がいたりしてどんなに仲良くなっても、1番にはなれない事に虚しくなる時がある。誰かの親友になりたいって思うんですよね。だから杏ちゃんの、どれだけ自分が思っていてもその子の好きな人には敵わない気持ちがとてもわかりました。私自身、人を信じる事が苦手なので余計に親友という響きに憧れるのかもしれません。
人間の限界の中で生まれる〝精一杯〟。登場人物達それぞれの今できる〝精一杯〟である一歩が私達に勇気をくれます。
元々は著者の劇団公演のために書き下ろされた戯曲で、時を経て小説になり、そして文庫本として発売されたそうです。この作品の破茶滅茶と、スピード感は舞台で見たらさらに迫力を感じるだろうなと思うのでいつかまた再演してほしいものです。その時に演じられたら最高だなぁ。彼女達の叫びが沢山の方に届きますように。
良い本の旅を。田島芽瑠でした。
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(次回は2025年3月中旬に更新予定です)