劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.3

劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.3

 劇団四季で上演中のオリジナル・ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の主演俳優(ベン・田邊真也さん、タング・斎藤洋一郎さん、長野千紘さん、生形理菜さん、渡邊寛中さん)5名による座談会企画の第3弾。今回は、「いい意味で劇団四季っぽくない」と言われる作品の魅力や、読書について伺いました!


朝、タングに「おはよう」と声を掛ける仲に

――今日は原作者のデボラ・インストールさんからの質問を預かっています。まず、タング役の方に。「これまでに人間以外の役を演じたことはありますか。もしあったら、それは何の役で、タング役とどんな違いがありましたか」。

斎藤
 ネコですね。あとは、『ライオンキング』でシマウマとか、パペットはやりましたけど、タングと全然違いますよね。どちらかというと、タングは人型じゃないですか。シマウマは動物なので、そこは全然違うかなと、あと、アプローチのしかたも違いますね。

長野
 私は、人魚と魔女と鬼と、まあ、人間を演じるほうが少ないんですよ。四季の俳優って、そうですよね。

斎藤
 確かに。

長野
 タングとはやっぱりアプローチのしかたが違うし、パペットで表現することと自分の身体で表現するのもまた違います。イギリスにはトビーさんのようなパペティアという職業がありますが、四季ではパペティアを俳優である自分たちがやるわけで、役を演じて心を動かしていることと、パペットを正確に丁寧に動かさないといけないというのと、俯瞰から見る冷静さっていう、この3つのバランスを保ちながら演じるという意味では、全然違いますね。稽古のしかたも、個室での個人稽古よりも、広い稽古場でずっと鏡の前でパペットを見ながら、ということも今までなかったです。

長野千紘さん
タング役 長野千紘(ながの・ちひろ)
2011年研究所入所。『サウンド・オブ・ミュージック』リーズル、『桃次郎の冒険』スモモ、『魔法をすてたマジョリン』マジョリンなどを演じている。

生形
 私はお地蔵さまですね。タングとは、内面的なものは似ていると思います。どちらの役も、幼さゆえにわがまま。人への思いやりがあって、いじらしいところもすごくリンクしました。一番違うところは、鬼の子どもだった子がお地蔵さまになるという設定だったので、自由だったところから不自由になる。でも、タングは無機質でただの箱だったものがだんだんと豊かになっていくから、逆のアプローチだったかなと。

渡邊
 僕は魚です。やっぱり、アプローチのしかたですね。タングは2人で1人を演じますけど、この子(タングのパペット)を通して2人が意思疎通しなきゃいけないっていうことが一番難しいし、今までやったことがないです。役に対して、これまでは自分一人で考えてやってきたことをペアで話し合いながらやる、ということがとても難しいことだなと思って、今も頑張ってやっています。

――では、デボラさんからベン役の方へ。「パペットとのやりとりはいかがでしたか」。

田邊
 僕はまず、彼ら4人の努力に対する尊敬と信頼から入ったので、そこでやり通せたかなって。それが一番強いですね。彼らの努力で日に日に関係であったり、絆の深さであったりが変わっていきました。例えば、稽古の最初の頃はタングと接しながらも彼ら自身が悩んでいるのが伝わってきたりしました。「小山さんにもらったアドバイスを咀嚼しきれてないのかな」とか「2人の意思の疎通がうまくいかないのかな」とか感じたんですけど、彼らの努力で次の日にはそれが解消されていたり、変化に繫がっていたり。それが信頼に繫がって、自分自身にとってもパペティアの2人の存在がどんどんなくなり、タングが本当に自分の子どものように思えてきて。朝、おはようってタングに対して声を掛けるような仲になったり、タングにどう言ったら自分の意思が通じるんだろうと考えたり。彼らの努力の土台があった上でベン役にアプローチできたので、苦しいと思ったこともないし、ほんとに尊敬と信頼でやっていたっていう感じですね。

田邊真也さん
ベン役 田邊真也(たなべ・しんや)
1996年研究所入所。『クレイジー・フォー・ユー』ボビー、『コーラスライン』ザック、『マンマ・ミーア!』スカイ、サム、『美女と野獣』ビースト、『思い出を売る男』タイトルロール、『鹿鳴館』久雄、『ハムレット』タイトルロール等、数多くの作品で主要な役を演じている。

心の傷に絆創膏を貼ってくれるような作品

――先ほど「『ロボット・イン・ザ・ガーデン』はいい意味で、劇団四季っぽくない作品」という言葉が出ましたが、どんなところが劇団四季っぽくないのでしょうか?

長野
 ボーイ・ミーツ・ガールじゃないところがありますね。私、恋愛小説があんまり得意じゃないので、そこは『ロボット・イン・ザ・ガーデン』のいいところかな。だから男性が1人とか、「ちょっと恥ずかしくて、ミュージカルとかレビューとか行けないよ」っていう方でも、初めてのミュージカルにちょうどいいよって、周りに言ってます。

田邊
 劇団四季がやってきたものは、大きなテーマをドーンと持ってくる感じがあるんですけど、『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は深いテーマはありつつ、物語的には最後に小さなファミリーが一つになってミニマムになっていく感じが今までの作風と違うと思います。それから、劇団四季は言葉をすごく大切にする劇団で、「聴かせるセリフ」というのがあるんです。「これは絶対にお客さんに持って帰ってもらうセリフ」だとか、「これはテーマを含んだセリフだから、自分の感情よりもそれを提示するセリフ」みたいな、ドーンというセリフが結構あるんですが、『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は、自分が日常でしゃべるような何気ない会話で紡がれていって、最後に「あっ、何か涙が出てきた」「何か温かいやわらかい風が来たな」っていう感じですよね。それはこれまでの作風とは違うなって。四季の作品の中では唯一、『赤毛のアン』と近い空気を感じました。

生形
 ああ、わかります。

田邊
 生きる輝きであったり、人生は素晴らしいという、伝えたいことはすべて込められている上で、表現の仕方として、自然にそれをお客さまに渡すことができる作品だなって。日常から生まれるものをそのままお見せして、お客さまご自身で、ああ幸せだな、生きるっていいなって感じてもらえるような。

生形
 ミュージカル大好き!って言う方って、ポジティブでハッピーな印象が私の中にあって。だけどこの作品は傷ついてる人とか、挫折を味わっている人とか、何か自信がない人が見たら、どこかしらで心に響く部分があると思います。エールをかけられるような、心の傷ついていたところに絆創膏を貼ってもらえるような、お手当してくれるような作品かなって。

生形理菜さん
タング役 生形理菜(うぶかた・りな)
2011年研究所入所。『思い出を売る男』花売り娘、『桃次郎の冒険』アンズ、『赤毛のアン』ジョシー・パイ、『魔法をすてたマジョリン』マジョリンなどを演じている。

田邊
 そうだよね。

生形
 もちろん、『ライオンキング』や『アラジン』を観て、ハッピーになって帰れるのも素敵だけど、何となーく温かくなって帰れるのは、この作品のすごく素敵なところだと思ってます。観に来た友だちの隣に座ってた年配の男性が一人ですごく泣いてらっしゃったとか、そういう報告をたくさん受けるんですよね。登場人物も、みんなちょっと挫折したり傷ついたりしてるから、すごく寄り添いやすい作品かなと。

渡邊
 確かに。アンドロイドもロボットも出てくるけど、登場人物がみんな、ほんとに「その辺にいる人たち」。だから寄り添いやすい。多分、僕らもお客さまに寄り添いやすいし、お客さまも僕らに寄り添いやすい作品なんじゃないかな。

田邊
 あと、クリエイターの遊び心がすごいです。例えばベンの家のセットには、昔のベンとエイミーのラブラブな写真が飾ってあるなど細かい遊び心が詰まってて、僕らもやりながら気づくような。もちろん、ほかの作品も皆こだわりを持ってやっているけれども、それプラス遊び心というのが、ほかの作品とはちょっと違いますね。

原作シリーズは敢えて途中でストップ

――最後に、「小説丸」が本のサイトということで、本について伺います。好きなジャンルや作家、人生を変えた一冊があったら教えてください。

斎藤
 僕はあんまり本を読まない人だったんですよ。母からは読め読めと言われたんですけど……。でも、劇団に入って、旅公演の時に伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』を読んで、すごく心惹かれました。そこから自分の読書の何かが広がって、しばらくは1日1冊ぐらい読んでましたね。あとは、僕、子どもの頃からミュージカルスクールに通っていて、発表会で宮沢賢治役をやったんです。『よだかの星』や『風の又三郎』を組み合わせたオリジナル・ミュージカル。本を読んだときに、クラムボンとか、ちょっと想像がすごいじゃないですか。わかるようでわからないようでわかるみたいな。あの面白さは今でも忘れられないですね。

斎藤洋一郎さん
タング役 斎藤洋一郎(さいとう・よういちろう)
2007年研究所入所。『コーラスライン』マイク、ポール、『キャッツ』マンゴジェリー、『アラジン』オマール、『パリのアメリカ人』アダムなどを演じている。

長野
 私は推理小説がすごく好きで。子どもの時からずうっと赤川次郎さんとか、最近は湊かなえさんなんかが好きですね。高校生の時も、まわりはみんな恋愛小説を読んでいるのに、1人だけずうっと推理小説を読んで一気読みしちゃうほど。犯人が気になってしょうがなくて(笑)。今も、甘い話とかは夜になると寂しくなりそうで(笑)、ずうっと犯人が誰か、決行したのは誰だって思いながら読んでます。どんでん返しも好きです。

斎藤
 ミステリーは面白いよね。

長野
 読み出すと止まらなくて、夜明けまで読む時もありますね。人生を変えた1冊というと、今、宮沢賢治の名前が出て思い出したんですけど、小学生の時に図書室に行って好きな本を1つ借りなきゃいけない、でもまだ本に全然興味がなくて、じゃあ、かわいい絵の本を選ぼうってなった時に『よだかの星』を初めて小学校で借りて。ちっちゃい鳥が描いてあるんですけど、母にそれを見せたときに、「いい本を選んできたね」って言われて読んだことを、今、思い出しました。で、そこから『銀河鉄道の夜』に行って。『注文の多い料理店』とか、風刺の感じもあって、でもファンタジーで……。

斎藤
 そうなんだよ。面白い! 

長野
 『風の又三郎』を読んだ後は転校生にドキドキしたりとか。

生形
 私は、西加奈子さんとか原田マハさんの本が好きです。女性の文章だからか、自然に入ってくる感じが好きで。お薦めの1冊は、モデルで女優で、雑誌の編集長もされている菊池亜希子さんの、『みちくさ』っていう本。3冊出てて、ほっこりするイラストとマップと写真が載っています。文章も、ほんとに一緒に道草してるような気持ちになって、心にゆとりが出る感覚がすごく好きなので、いつも本棚の目に入るところに置いておく1冊です。かわいいです。

渡邊
 僕は最近全然本を読めてなくて……。結構いろいろ読むんですけど、今、漫画にはまってます。『僕のヒーローアカデミア』が一番好きなんですけど、『ハイキュー!!』も読み始めて。『鬼滅の刃』も『東京卍リベンジャーズ』も読んでるし、もう、いろんなのを追いかけすぎて大変です(笑)。漫画だったら、絶対『僕のヒーローアカデミア』なんですけど、僕は。漫画だったら。

渡邊寛中さん
タング役 渡邊寛中(わたなべ・かんな)
幼い頃から地元のミュージカル劇団で活動後、2015年に劇団四季入団。『エルコスの祈り』ニールス、ジョージ、『リトルマーメイド』フランダーなどを演じている。

斎藤
 漫画でいいんですか、「小説丸」は(笑)。

渡邊
 小説だったら……僕、ちゃんと両方読んでるんですよ(笑)。

斎藤
 漫画だったら、僕も最後に言いたい!

渡邊
 小説だったら、『青空のむこう』っていう本。多分、人生で初めてちゃんと読んだ小説なんですけど。男の子がお姉ちゃんと喧嘩して、お姉ちゃんが弟に、「おまえなんか死んじゃえばいいんだ」って言うんですけど、その朝に交通事故で弟は亡くなってしまって。その子が死者の国から下界に降りてくるんです。最後、ちゃんとお姉ちゃんに会って、「君を愛してるよ、ずうっと」っていうひとことを言うところがあって。僕はそれを読んだときに、「ああ、もうここで死んでもいいやって思えるぐらいの人生を歩みたいな」って思いました。だから、それが僕の人生を変えた1冊だなと思います。

斎藤
 この話の後じゃ無理(笑)。僕は小学館の『タッチ』なんですけど。僕、双子なんで。あと、『名探偵コナン』は大好き。それだけなんです。ごめんなさい(笑)。

田邊
 僕、自分が読んでる本はあんまり言いたくないんですけど。自分をつくっているものがバレるみたいで。でも、小学館さんでって考えた時にはっとなったのが、『日本の歴史』っていう漫画を小学校の時に全巻読んで、その中に『武田信玄と上杉謙信』があって、あれは何回も読んだな。かっこいいなって。

渡邊
 引き分けになったっていう。

田邊
 そうそう。勝つ負けるっていうより、小学生なりに、どっちも男としてかっこいいって読んでたなって。あとは、僕が本に目覚めたのが、山崎豊子さんの『二つの祖国』。読んだ時に、日本人である意味をすごく考えさせられました。あっ、そうだ。『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は全巻持ってるんですけど、3冊目の途中で止めてるんです。すごく面白くて、4冊目もすぐ買ったんだけど、4冊目が出た時、僕らはすでに稽古中だったんですね。その時に小山さんに、タングとの距離感、特に会った時の新鮮な感じの距離感を大切にしてって言われていて。これを読み進めることで、タングとの距離感が近くなりすぎてしまうことが怖いと思って。で、敢えてこういう世界からちょっと違う方向のものを読もうと、三島由紀夫の『金閣寺』をもう一回読み直したり、前にも読んだ夏目漱石の『草枕』を朗読で聴いてみたり。すると読んだ時とまったく違うように文が浮き立ってきて、こういう本の読み方も面白いなと思ったという、本にまつわる話でした(笑)。

(一同拍手)

 終始和気藹々と、家族のような雰囲気で進んだ座談会。原作小説をはじめシリーズを通して描かれる「家族の絆」を体現しているようで、そのあったかさは舞台からもじわじわと伝わってきます。ぜひ一人でも多くの方に、劇場でその優しくて温かい空気に触れていただきたいと改めて感じた取材でした。
 ちなみに、今回ご紹介しきれなかったエピソードは、劇団四季の会報誌『ラ・アルプ』2月号(1月29日発行)で読むことができます。気になる方はそちらもぜひチェックしてくださいね!

劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.3 | 小説丸

(撮影:阿部章仁)


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