劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.1

劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.1

 昨年10~11月に劇団四季の16年ぶりの一般向けオリジナル・ミュージカルとして上演された『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(台本・作詞:長田育恵、演出:小山ゆうな、作曲・編曲:河野伸)。原作は、両親を事故で失って以来無気力な日々を過ごすベンと、壊れかけのロボット・タングの出会い、旅と交流、成長を描いた同名のイギリスの小説(デボラ・インストール著、松原葉子訳、小学館文庫)です。コロナ禍にもかかわらず、初月のチケットは即日完売。開幕後は、パペットで表現される幼児のようなタングの何とも言えない可愛さ、疲れた心に染み入るような優しい音楽や胸に刺さるセリフ、舞台への愛に溢れた演技や演出に多くの人が魅了され、11月に行われた劇団初のライブ配信には、予想の3倍を超える視聴数を記録しました。
 1月17日に約1か月半のインターバルを経て再び幕を開けることを記念し、ベン役の田邊真也さん、タング役の斎藤洋一郎さん、長野千紘さん、生形理菜さん、渡邊寛中さんの夢の座談会が、劇団四季会報誌「ラ・アルプ」と「小説丸」との合同で実現! 原作小説への思い、劇団内外のスタッフが力を合わせて作品をゼロから作りあげる苦労や喜び、ペアの俳優2組(斎藤・長野ペアと生形・渡邊ペア)が交替で演じるパペットのタングの秘密など、「ここだけの話」を聞いてきました!


「ベンと同じ年齢だったら演じる勇気がなかった」

――皆さん、劇団内オーディションを経ての配役と伺っています。受験前に原作も読んで挑まれたとか。最初に読んだ時の感想や、印象的な場面を教えてください。

田邊
 やわらかい文章だなってすごく思いましたね。旅先のパラオでタングが熱を出して寝ている時に、ベンが外に行って撮ってきた写真をホテルに帰って一緒に見る場面は、もうほんとにかわいいなって(笑)。ほかにも好きなシーンはいっぱいあるんだけど、あそこはベンのタングを大切にする感じがそれまでと全然違って。「この写真を喜んでくれるかな」とベンが思うところが、すごく好きでしたね。僕、ベンにとても共感したんですよ。一歩踏み出せないコンプレックスであったり、そのせいで妻のエイミーに自分の気持ちを伝えられなかったり、そこから頑張って立ち直っていく姿に。

田邊真也さん
ベン役 田邊真也(たなべ・しんや)
1996年研究所入所。『クレイジー・フォー・ユー』ボビー、『コーラスライン』ザック、『マンマ・ミーア!』スカイ、サム、『美女と野獣』ビースト、『思い出を売る男』タイトルロール、『鹿鳴館』久雄、『ハムレット』タイトルロール等、数多くの作品で主要な役を演じている。

 その共感があったから、オーディションを受けようと思ったんです。原作ではベンは34歳で、僕はそれより上なんですけど、原作を読んだ時に、「ああわかる」って。自分にも、人に言えないコンプレックスはありますから。でも僕が今30代だったら、怖くてこの役をできなかったと思うんです。演じるには自分の内面をえぐり出さなきゃいけない。当時だったらその勇気はなかったと思うけど、年齢がちょっと離れた分、今だからこそチャレンジできるって思うくらい、すごくベンに共感しちゃって。だから、四季の上演が決まって原作を読んで、「ああ、いいものに出会ったな。選ばれるかどうかわからないけど、オーディションがあったら必ず受けよう」と思いました。

斎藤
 実は原作を読む前は、僕もベン役を受けようと思ってたんです。タングじゃないな、自分はって。ベンは僕にはちょうどいい年齢ですし。でも、原作を読んでいるうちに、自分よりもうちょっと上の人がやるんじゃないかなと勝手に思えてきて。どうしようかと思ったけど、結局、僕はタングで受けたんです。ベン役が先輩だったら、自分のタングはあり得るだろうなって。でも、実際にどういうロボットになるかも知らなかったし、二人でやるとも……。

長野
 私も知らなかった!

斎藤
 原作を読んで面白かったのは、言葉遊びや、その言葉の選び方がすごくコンテンポラリーなこと。章がシーンごとに小分けになっていて、その章の最後がくすっと笑えるところが多いですよね。タングの「ほら、ベン、遅刻するよ」という言葉で終わったり。そういうところが愛くるしくて。だから、実際にタングを演じることになった時は、そういう要素を絶対に入れていきたいなと思いました。あと、(原作者の)デボラさんのあとがきも、タングの動きを作る上で参考にしましたね。

斎藤洋一郎さん
タング役 斎藤洋一郎(さいとう・よういちろう)
2007年研究所入所。『コーラスライン』マイク、ポール、『キャッツ』マンゴジェリー、『アラジン』オマール、『パリのアメリカ人』アダムなどを演じている。

生形
 『ウォレスとグルミット』のグルミット。

長野
 デボラさんもグルミットをタングに重ね合わせたって書いていましたね。

斎藤
 そう、タングの演技は主に動きで構成されているから、できる限り、原作に描かれていることを動きに取り入れていきたいなと思ったんです。例えば原作の中の「古いやかんや圧力鍋みたいにため息をついた」という動きをどこかに入れたくて、舞台では怒っている場面で取り入れたんです。そういう、演技に取り入れたいタングの描写に付箋を貼っていって、稽古の途中で全部台本に書き起こしてたんですよ。で、千紘に「この動きをここでやりたいんだ」って相談して。

田邊
 原作本が(付箋で)倍ぐらいにの厚さになってたからね。

長野
 私は原作を読みながら、最初に音がすごく聴こえるなって思いました。描写が細かくてわかりやすくて、タングが歩く足音だとか、今の「ため息」もそうですけど、タングが発する音が聴こえてくる感じがしました。あと、この表紙の絵からもイギリスらしい世界観にひゅっと入っていける。その雰囲気もすごくやわらかくていいなと思いました。

長野千紘さん
タング役 長野千紘(ながの・ちひろ)
2011年研究所入所。『サウンド・オブ・ミュージック』リーズル、『桃次郎の冒険』スモモ、『魔法をすてたマジョリン』マジョリンなどを演じている。

2組それぞれのタングの表現

生形
 私は先輩に、「ウブちゃん、タングにぴったりだから読んでみなよ」って勧められて読んでみたら、タングがめちゃめちゃかわいくてすぐに虜になりました。でも、真也さんは共感したっていうベンに私は、うだつがあがらなすぎて「もう、とっとと旅に出い!」っていう感じになって。(旅に出るための)リュックを選ぶのに何日もかけるな! と、イライラしながら読みました(笑)。だから私は妻のエイミーにすごく共感しましたね。好きなシーンは、ベンが亡くなった両親から受け継いだ車を手放すシーンで、「僕も役に立つことを両親に証明したかった」ってベンが泣いている時に、タングが頭に手を乗せて、「大丈夫だよ、ベンは今、治癒してるんだよ」っていうところ。デボラさんがあとがきで、タングには共感する力を与えたって書かれていた、そこが最たるものかなと思いました。

斎藤
 舞台の最初に、「タング、直る? ベン、直る?」っていうセリフがあるんですけど、そこは(脚本の)長田さんが原作から取り入れたのかなって思いました。

生形
 原作はベンの目線で書かれていて、本当は表情は動かないはずなのに「タングは僕の顔を覗き込みにんまりした」とか、「大きく見開いた目を僕に向かってぱちぱちさせながら精一杯かわいい顔をしようとしていた」とか、そういう表現がうまく出せたらすごく面白いだろうなって。洋さんは、タングの四角い目のまま、動かしすぎないでお客さまの想像に委ねたいって言ってたけど、私は原作の変化するタングに面白味を感じたので、吊り目にしたり垂れ目にしたり、瞼を半分下げたり、4分の3閉じるとか、目の傾きによってもすごく表情の変化が出るので、そこをうまく使い分けて演じられたらいいなって。稽古中は途中まで洋さんのように上手くやらなきゃと思って走ってきたけど、「あ、違う道を歩もう」と思えたきっかけが、タングのそういう表情の変化でした。

生形理菜さん
タング役 生形理菜(うぶかた・りな)
2011年研究所入所。『思い出を売る男』花売り娘、『桃次郎の冒険』アンズ、『赤毛のアン』ジョシー・パイ、『魔法をすてたマジョリン』マジョリンなどを演じている。

斎藤
 ダブルキャストはタングだけだったので、どうしてもお互い比べちゃったりしましたね。それに、(演出の)小山さんが相手チームに演出をつけていたら、自分たちも聞くじゃないですか。だから、ちょっと自分たちの居所がわからなくなってくるんですよね。で、小山さんに聞くと、「いや、こっちのチームはしなくていい」と言われたりして。でもそこで混乱しそうなところを、小山さんがまたうまく伝えてくださって。

生形
 うん。文章の最後でくすりと笑える感じって、洋さんチームの飄々とした魅力に表れてますよね。私たちはまた違う感じで(笑)、同じ原作でも面白いと思ってピックアップしたところが違うから、違う道を歩んでよかったのかなって今改めて思いました。

渡邊
 僕はオーディションを受けようと思ってなくて、原作を読んだ先輩から「えっ、何でタングを受けないの? 寛中、タングにそっくりだよ」って言われて読み始めたんです。

渡邊寛中さん
タング役 渡邊寛中(わたなべ・かんな)
幼い頃から地元のミュージカル劇団で活動後、2015年に劇団四季入団。『エルコスの祈り』ニールス、ジョージ、『リトルマーメイド』フランダーなどを演じている。

 ものすごく共感したのは、僕はほんとに球技が苦手で、子どもの頃、父親にキャッチボールに誘われても楽しくなくて。原作でもベンがタングを誘ってキャッチボールをして、「タング、楽しいだろう」って言うと、タングが「何で?」って言いますよね。僕、まったくそれなんですよ。父親に楽しいだろって言われても、僕にとってキャッチボールは楽しいものじゃなくて。雪が降った時に父に雪かきしようと言われても、こたつに入っていて、ホントにタングと同じ(笑)。どちらかというと、水族館で魚を見てわあーってなってる方だったので、タングはもう、僕を見てるみたいで。それで受けてみようかなと思いました。演じていても、例えば親のために一生懸命料理を作ったこととか、忘れていた子どもの頃の気持ちをすごく思い出させてくれたので、お子さんがいる方とか、大人の方が「子どものとき、こんなことがあったな」って思い出せる作品になってくれたらいいなって思います。

*たのしい座談会はまだまだつづきます
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劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」主要キャスト特別座談会〈新しい創造のかたち〉vol.1
本当の家族のような雰囲気。
オリジナルTシャツを皆さんで着てきてくださいました。

(撮影:阿部章仁)


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