◉話題作、読んで観る?◉ 第26回「Red」

◉話題作、読んで観る?◉ 第26回「Red」

監督:三島有紀子/脚本:池田千尋 三島有紀子/音楽:田中拓人/出演:夏帆 柄本佑 間宮祥太朗 片岡礼子 酒向芳 山本郁子 浅野和之 余貴美子 妻夫木聡/配給:日活 R15+
2月21日(金)より全国ロードショー
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 直木賞作家・島本理生の官能小説を、浅野忠信主演作『幼子われらに生まれ』が高く評価された三島有紀子監督が映画化。清純派から演技派へと成長を遂げた夏帆主演によるヒロインものとして、見応えのある大人のドラマに仕上がっている。

 主婦の塔子(夏帆)がかつての恋人・鞍田(妻夫木聡)と再会したことから物語は始まる。一流商社に勤める夫・真(間宮祥太朗)との間にはひとり娘がおり、経済的にも恵まれた暮らしを送っている塔子。だが、10年ぶりに会った鞍田から再就職を勧められ、現状の生活に満足できていない自分がいることに気づく。

 鞍田の紹介で設計事務所で働き始めた塔子は、仕事にやりがいを感じるようになる。職場での情熱を取り戻した塔子は、鞍田への想いも甦ることに。出張先の新潟で大雪に見舞われた夜、東京から車を運転してきた鞍田が現れ、塔子の心は大きく揺さぶられる。

 東京に早く帰らなくてはと焦る塔子だが、鞍田の車に乗れば二度と平穏な家庭生活に戻ることはできなくなる。そんな大人の男と女の関係が、スリリングに描かれている。吹雪にさらされた車道を飛ばされていく赤いフラッグは、危険信号か、それとも生への衝動のシンボルか。

 塔子と鞍田との濃厚な恋愛シーンだけでなく、塔子が職場で働く姿も丁寧に描かれている。なかでも愛情のない家庭で育った塔子と鞍田が、ミニチュアの〝理想の家〟づくりに熱中するシーンが印象的だ。鞍田が設計した小さな窓から、塔子も同じ景色を見つめようとする。愛する人と同じものを眺めたいという塔子の心情に、共感を覚える人は少なくないだろう。

 原作からかなり脚色された展開となっており、映画の結末は原作以上に辛辣だ。妻、母、女。いくつもの顔を持つ塔子は、身を切るような決断を迫られる。そして、その決断は、塔子だけでなく多くの人を傷つけてしまう。

 完成した映画を観た島本は、原作と結末が大きく異なる点について、「女性の生き方というものに正解がない」と好意的に認めている。観る人によっても、塔子の印象は大きく異なるだろう。ラストシーン、決して後ろを振り返ろうとしない塔子の歩く姿は、女の強さと弱さが入り混じったとても複雑なものとなっている。

(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2020年3月号掲載〉

原作はコレ☟
『Red』
『Red』
島本理生/著
(中公文庫)