臨床の砦

夏川草介『臨床の砦』
コロナ最前線の砦から 本書『臨床の砦』は、コロナ診療の最前線を描いた小説である。最前線といっても、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)が登場するような高度医療機関ではない。呼吸器内科医も感染症専門医もいない、地方都市の小さな感染症指定医療機関が舞台である。
「推してけ! 推してけ!」特別編 ◆『臨床の砦』(夏川草介・著)
評者・知念実希人(作家・医師) 現役医師がコロナ禍の地域医療をリアルに描いたドキュメント小説 二〇二〇年の初め、数か月後に予定されているオリンピックを待ち望んでいた日本の「日常」は誰も気づかないうちにゆっくりと、しかし確実に侵食されはじめていた。中国の武漢で報告された原因不明の肺炎の原因は、一月には新型のコロナウイルスによる感染症であると判明し、