「妄想ふりかけお話ごはん」平井まさあき(男性ブランコ)第9回

「妄想ふりかけお話ごはん」平井まさあき(男性ブランコ)第9回
唯一無二の世界観で今大注目のお笑いコンビ〝男性ブランコ〟。そのネタを作る平井まさあきさんの脳内は一体……? たっぷりの妄想をふりかけた、おいしいおいしい平井さんの日常をお楽しみください!

9.「ワンスモア、プリーズ」

 今現在、舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』の本番真っ只中です。しかしながら、この記事が公開される頃には終幕を迎えるところとなっているでしょう。きっと、あっという魔に取り憑かれて「あっという間なのだ!」と連呼していることでしょう。さらには寂し魔にも重ねて取り憑かれ「終わってしまって寂しんす!」と泣き喚いていることでしょう。どうか公演に関わる皆々様が怪我なく健やかに終えておりますように。

 ということで、今回はこの『鴨川ホルモー、ワンスモア』について、ネタバレをしないような溢れ話的なものをコボコボしたいなと思います。

 そもそも『鴨川ホルモー』は万城目学さん原作の、恥を題材にしたおもろおもろな青春小説です。さらにその続編であります『ホルモー六景』と『鴨川ホルモー』を上田誠さんがこれまたおもろおもろに混ぜ混ぜした作品が劇『鴨川ホルモー、ワンスモア』なのです。万城目さんもお墨付きの素ん晴らしくおもろおもろの作品であります(もしまだ観てないという方、舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』は配信もあるのですよ、ぜひご覧いただきたい)。

 まずは魅力に満ち満ちた演者たちについて。お芝居については僕はなかなか言語化できず、ただただこのプロ集団に口あんぐりさんでしかないので、そことはまた別の一面をば。

 我らが座長、Dこと中川大輔くんはトイレの引き戸を引いて自分の体にぶつけ「近さがわからなかったです」というほどのおっちょこのちょいの助です。

 りーちゃんこと八木莉可子さんはいつもふんわり軽やかで、ある日、通し稽古を終えた時に、みんなが「いい通しだったね」と言っている中、ぼそっと「A、B、C、D、E通し」と言ってて笑ってしまいました。

 寛ちゃんこと佐藤寛太くんは、生来の熱血野郎、彼のお気に入りの公園を共に歩き、お気に入りの素敵カフェを紹介してもらいました。こんなんデートやん、でした。

 せいやんこと清宮レイさんは、いつも子犬のようにてこてこ歩いていて、その笑顔は破壊光線ほどの威力で周囲をいつも焼け野原にしていました。

 鳥ちゃんこと鳥越裕貴くんは、飄々としていながらも率先して後輩をしてくれる愛嬌の持ち主。いい酒場をたらふく知っている伊達男。

 ぴろことヒロシエリさんは、歩く蛍光灯かと言わんばかりの明るさで広く照らしてくれる。オニ語の「ぐえげぼ」を誰よりも面白く言える人。

 藤祥こと藤松祥子さんは、体の真縦にブレない芯を通し、緻密な動き、キリリとしておられます。おそらく武家の娘さんです。

 みぽ姉こと片桐美穂さんは、そのディーバな美しい歌声ながら、立派なますらおっぷりを発揮してらっしゃいます。ジャンヌさんとこのダルクです。

 ナディこと日下七海さんは、どこにそんなエネルギーがあるのだという運動量を体内に蓄積してらっしゃる。ちなみに僕のストレッチの師匠です。

 ちなみついでのちなみなのですが「◯◯こと△△」の「◯◯」は僕が勝手に呼んでいるものもあるので悪しからず。

 そしてヨーロッパ企画のみなさん。晴樹の旦那こと中川晴樹さんは、寡黙な親父さんです。しかしその優しい眼差しはマグダラのマリアさま。僕が着ている服の生き物をいつも探してくれます。

 土佐兄こと土佐和成さんは、抜群の兄貴肌なのですが、小さい男の子のように質問してきます。ダメだと言いつつポテチばっかり食ってます。

 剛太石田こと石田剛太さんは、剛太という名とは裏腹になんて柔和な方でしょうか。物腰もくにゃくにゃです。ストレッチのライバルです。

 おすみすみこと角田貴志さんは、底知れぬミステリアスを身に纏っておられます。なのに話しかけやすい。トレーニーで体すごいレスラー。

 サッカー井選手こと酒井善史さんは言わずと知れたメカの達人。人見知りかと思いきや、飲み会は常に行きたい方。酔ったらテーブルの上のものをこぼし倒します。

 ウディこと岩崎う大さんは思慮深く常に何かを思考している様。しかしながら、朝冷たいシャワーを浴びるという、コールドシャワーをずっと勧めてくるコールドシャワー教の伝道師です。

 槙尾ユウスケさんこと槙尾ユウスケさんは、女装のつやつやな可憐さは語るに及ばずですが、その愛され立ち振る舞いは化け物級であります。

 浦さんこと浦井は相方です。大学の頃の友達です。『鴨川ホルモー』が大学生が題材でもあるので、当時のことを少々思い出したりしました。浦さんは当時所属していたサークルのBBQで野菜ばっかり焼いて野菜ばっかり食っていました。

 まこちんこと上田誠さんは、酒化け物です。大海賊時代をまだひきづってるんじゃないかというほどの酒豪。酔ってくると目がにゅるんと溶けてきて、最終、縦になっています。

 以上、演者陣でした。

 そしてこの公演に関わるスタッフさん社員さんのトンデモスキル、プロフェッショナルワークを目の当たりにすると頭が下がりっぱなし首鞭打ちです。彼らにとって、「こんなのお茶のこさいさい、当たり前なのですよん」と言うかもしれません。しかしながら、この公演をお客さんに楽しんでもらいたいという高温の熱を感じずにはいられません。若輩ながら僕もお笑いという舞台を作っています。これからも作っていきたいと考えています。ですので今回の舞台、とても勉強させていただいています。無事終幕を迎えるまで、まだまだしかと見させていただきます。

 現時点で、今はまだ公演の序盤ではありますが、稽古期間、そして実際本番を迎え、お客さんの前で『鴨川ホルモー、ワンスモア』を上演できて、とても楽しいです。とても嬉しいことなのですね、楽しいって。

 なんの衒いもなく言わせてもらえるのならば、舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』をワンスモアしたいと心から思います。ニッちゃんことニッポン放送さん、またよろしくお願いいたします。


平井まさあきさん

平井まさあき[男性ブランコ]
1987年生まれ。兵庫県豊岡市出身。芸人。吉本興業所属。大阪NSC33期。2011年に浦井のりひろと「男性ブランコ」結成。2013年、第14回新人お笑い尼崎大賞受賞。2021年、キングオブコント準優勝。M-1グランプリ2022ファイナリスト。第8回上方漫才協会大賞特別賞受賞。趣味は水族館巡り、動物園巡り、博物館巡り。


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