北斗の星紋

飯嶋和一さん「北斗の星紋」第4回バナー画像
       十四    田沼意次のもと各地に開発を推し進める勘定奉行の松本伊豆守秀持(ひでもち)は、知行五百石、当年五十六歳を数えた。色浅黒く年齢のわりには髪黒々とした小男で、ど
飯嶋和一さん「北斗の星紋」第4回バナー画像
       十一    天明四年(一七八四)十二月二十六日深夜、芝宇田川町(しばうだがわちょう)の地主加瀬屋伝次郎(かせやでんじろう)は、大火を報せる二度打ちの半鐘で眠りを破られ
◇長編小説◇飯嶋和一「北斗の星紋」第3回 後編
 蔵前の札差大口屋といえば、十八大通(つう)で知られた大口屋暁雨(ぎょうう)、日銭千両を豪語して金を湯水のごとく遣い、吉原の大門を閉めさせて遊里を丸ごと買い切ったという馬鹿者の見本だった。その一族にし
飯嶋和一さん「北斗の星紋」第3回 前編
       七  天明四年(一七八四)五月一日、江戸の町名主がこぞって北町奉行所に呼び出された。  奉行所では、南町奉行の山村信濃守良旺(しなののかみたかあきら)、それに町年寄の喜多村彦
◇長編小説◇飯嶋和一「北斗の星紋」第2回 後編
       六  四月二十九日、丸屋勝三郎(まるやかつさぶろう)が新たに摺り上げた銅版画を持ってきた。御茶ノ水の景色を描いた、縦八寸四分(約二十五センチ)、横一尺二寸五分(約三十七センチ
◇長編小説◇飯嶋和一「北斗の星紋」第2回 前編
       四  天明四年(一七八四)三月二十四日、若年寄の田沼山城守意知(やましろのかみおきとも)が江戸城内で佐野善左衛門(ぜんざえもん)に斬られ、二日後死去した。その後、父田沼主殿頭
◇長編小説◇飯嶋和一「北斗の星紋」第1回 後編
       二    四月六日夕、丸屋勝三郎がまたやって来た。三日前、佐野善左衛門が評定所で切腹を言い渡され、牢屋敷に戻された後、揚屋の前庭で切腹したのだという。評定所では、佐野
◇長編小説◇飯嶋和一「北斗の星紋」第1回 前編
       一    いつの間にか闇が降りていた。六ツを報せる芝(しば)切通しの鐘も聞こえなかった。加瀬屋伝次郎(かせやでんじろう)は、手さぐりで戸袋の奥から埃(ほこり)まみれの