『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』知念実希人/著▷「2024年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR
こどもたちに、本気のミステリを
ライツ社は兵庫県明石市にある、総勢6名の小さな出版社です。「write, right, light(書く力で、まっすぐに、照らす)」を合言葉に、ジャンルを問わず、自分たちが面白いと思う本を絞りに絞り、発刊しています。わたしは本が大切にされているライツ社にあこがれて、東京の児童書出版社2社で合計20年ほどつとめたのち、関西に引越し、2020年末に入社しました。
人生ではじめて出会うミステリ
入社早々、「知念さんとこどもの本をつくる」という大きなお題をいただきました。とある書店員さんが、「知念さんがこどもの本を書いたら絶対おもしろいと思うねん」と、ライツ社と知念さんをおつなぎくださったんです。
こどもの本といっても幅広いので、書店の児童書担当さん、そして各年齢のこどもたちにインタビューをさせてもらい、「かいけつゾロリ」(低学年向け読み物)シリーズと「はやみねかおる作品」(高学年向け読み物)の間、小学校中学年向けの作品にしようと決めました。
絵本や幼年童話が物足りなくなって、読み物に移行するとき。こどもが本を自分で選ぶようになるとき。「本っておもしろい」「ミステリっておもしろい」という最初のきっかけになる作品をつくりたい。まっすぐな文章で、読者とのナゾ解きを心から楽しんでいる知念さんの作品に、こどもたちが出会ってくれたら。
そんなふうにはじまったこの企画。
打ち合わせをした半年後に原稿が届きました。
すごくおもしろかったんです。
殺人事件はないのに、トリックは本格的。にもかかわらず、その内容は、某書店社長が帯に「はずかしながらナゾ解きは、大人の私でも外してしまった」と寄せてくださるほど。
知念さんに聞きました。
「ずっと文芸でやってこられた方が、どうしてこんなにもおもしろいこどもの本が書けるのでしょうか」「これはおとなのミステリとまったく同じ手法で書いたんです」と。
今までになかった、小学生からおとなまで、親子で楽しめる本格ミステリができました。
読書は楽しい
わたしはこの本がこどもたちのミステリ好きの扉をひらくと信じています。そして、いまのこどもたちが親になったときに「こどもの頃大好きだったシリーズだ」と、また書店さんの棚で出会い直してくれる未来を信じています。
「読書は楽しい。そのことを子どもに知ってほしい。それがこの作品を書いた最大の目的でした」。作者の知念実希人さんの言葉です。
多くの書店員さまから応援をいただき、本屋大賞にノミネートすることができました。児童書で史上初、そして東京以外の出版社としても初なのだそうです。
読者のみなさま、書店さまとこのシリーズを大切に育てていけたらうれしいです。
どうか「放課後ミステリクラブ」を末永くよろしくお願いします。
──ライツ社 児童書編集 感応嘉奈子
2024年本屋大賞ノミネート
『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』
著/知念実希人
ライツ社
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