『硝子の塔の殺人』知念実希人/著▷「2022年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR
深夜のメールに涙をこぼす
「クラシックな山荘もののクローズドサークルで、これまでにない大きな仕掛けをした作品に挑戦しようと思うのですが……」
2020年9月。知念実希人さんからのメールに、そう記されていました。当初、打合せで聞いていた雰囲気とは異なりましたが、この文面を読んだとき、鳥肌がたちました。
「プロット読みますか?」と聞いて頂いたと思います。でも、遠慮しました。文芸編集者として失格かもしれませんが、プロットを読むのがあまり得意ではないのです。単なる我がままですが、ひとりの読者として、できるだけ素のままで原稿を読みたいと思ったのです。
12月後半。知念さんから再び連絡がありました。
「今回の作品は、本格ミステリなので、島田荘司先生や綾辻行人先生など、たくさんの作家さんに読んでほしい」
「これは困った。大変だぞ……」と畏れを感じつつも、「滅茶苦茶、勇気あるな」と感心しました。
2021年1月下旬。約束通り、知念さんは脱稿しました。読ませて頂き、震えました。これは、凄い。
5月下旬。多くの先生の方々から『硝子の塔の殺人』のコメントや感想を頂戴しました。しかし、ひとりだけ届いていない……。その最後のひとりが、島田荘司先生でした。「憤慨してコメントをくれないのか」「なにか粗相をしてしまったか」と、不安が膨らみます。
メールが届いたのは、金曜日の深夜でした。コメントのみならず、解説原稿までもが添付されていました。
「当作の完成度は、一斉を風靡したわが『新本格』時代のクライマックスであり、フィナーレを感じさせる。今後このフィールドから、これを超える作が現れることはないだろう」
島田先生の原稿を読みながら、涙がこぼれました。本作、そして愛弟子・知念さんへのリスペクト。本格ミステリへの愛。さまざまな想いがあふれていました。本作巻末に収録の「刊行に寄せて」を、読んで頂けたら幸いです。
2022年本屋大賞にノミネート頂き、心より感謝申し上げます。
本作での編集者としての初体験が、小説から楽曲を作成して頂いたこと。
米澤森人さん「neutrino(ニュートリノ)」。ご注目ください。
──実業之日本社 文芸出版部 阿部雅彦
2022年本屋大賞ノミネート
『硝子の塔の殺人』
著/知念実希人
実業之日本社
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