ニホンゴ「再定義」 第17回「女子力」
本連載は、〝職業はドイツ人〟ことマライ・メントラインさんが、日常のなかで気になる言葉を収集する新感覚日本語エッセイです。
名詞「 女子力 」
女子力というコトバが世間に定着して久しい。
定着した割には定義が難しい表現であり、うかつなことを言えばむしろ嵐のようなツッコミを招きかねないビミョー語といえそうだが、個人的に、果たしてこの単語は「女子の味方」なのか否かという点が、以前から大いに気になっている。
まずは「定義」とされるものどもを見てみよう。では定番のウィキペディアから。
女子力(じょしりょく)とは、女性らしさを表す言葉である。女性が女性らしい態度や容姿を重んじ、女性ならではの感覚・能力を生活や職業に活かすことを言い、女性が自分の生き方を向上させる力や、女性が自分の存在を示す力のことである。2009年の新語・流行語大賞にノミネートされた。
英語では、人気ガールズロックバンドのスパイス・ガールズが提唱した「ガールパワー」という言葉があるが、その場合は「少女同士の結束、少女と若い女性の中の独立独歩の態度」などを表す言葉であり、女子力とは意味が異なる。
「女性らしさ」という、別のビミョー語を説明の基軸語として使用しているあたりが実は問題といえば問題で、定義の核心議論を単に先延ばしにしているだけじゃないか的な印象もあるが、世間的なリアル使用感覚に沿っているという点ではまあ妥当な内容といえるだろうか。後段の「ガールパワー(英)」との比較もなかなか考えさせてくれる。
では、女子力というチカラの属性や特徴は何なのか。とりあえず「女子力」検索結果の上位に浮上したものを、市場原理にもとづく現在(2024年6月時点)の一般的認識と見做すという流儀で情報を拾ってみよう。するとウィキペディア以外でトップに来るのが街コンJAPANという婚活系サイトなのが実にたまらない。いろんな意味で暗示的だ。で、そこに「女子力の高い人の特徴10個」という紹介がある。列挙してみると、
1:家事が得意
2:香水のいい香りがする
3:いつでも化粧が決まってる
4:絆創膏などのアイテムを常備している
5:誰にでも気遣いができる
6:オシャレで身だしなみが整っている
7:言葉遣いが美しい
8:肌や髪の毛が綺麗
9:フェミニンな服装が好き
10:ヘアアレンジが得意