◎編集者コラム◎ 『今夜、ぬか漬けスナックで』古矢永塔子
◎編集者コラム◎
『今夜、ぬか漬けスナックで』古矢永塔子

イラストレーターのかないさんによる装画で、カバーを見ているだけでも心がホッと温まる文庫本ができました。
【あらすじ】
わけあって職と家を失い、ネカフェ難民になっていた主人公の槇生。そんなとき、ずっと音信不通だった母の訃報が届き、槇生は葬儀のために小豆島へ行くことになります。するとそこにいたのは、母の元夫だという自分より年下の男。槇生はしかたがなく、彼の家に住まわせてもらいながら、母と彼とで営んでいたという「スナックかえで」の手伝いをすることになり──。
第1回日本おいしい小説大賞を受賞した著者なだけあって、おいしいものと、それをおいしそうに食べる人たちを描く力はスゴい! 今作でも、読者の期待を裏切りません。
「ぬか漬け」で描かれる食べものといえば、きゅうり、かぶ、にんじん。ちょっと変わったもので言っても、チーズ? と、ふつうの方なら思うのではないでしょうか。いえいえ、もちろん、今作で描かれるのはそれだけではありません。
新玉葱。スナップエンドウ。それから、林檎やチーズ、ドライフルーツのぬか漬けに生ハムやオリーブの塩漬けを合わせたピンチョス。アボガドとレーズンのぬか漬けを使って作るマナガツオとアボガドのタルタル……。
デザイナーのbookwall・築地さんと、イラストレーターのかないさんと装丁デザインの打ち合わせをした際、おふたりとも「ぬか床、私もはじめたい!」とおっしゃっていたので、私はドヤ顔で、スーパーでも気軽に買えて簡単に始められるぬか床があることを話しました(単行本編集時にはじめて、見事にハマってしまったのでした)。
今作を読めば、きっとみなさんもはじめたくなるはず。いきものみたいに育っていく様子を舌で味わい楽しめるという、唯一無二の喜びにハマってしまうでしょう。
「スナックかえで」の常連客たちといっしょに、ぜひみなさんにも、人生にも似た「ぬか床」の奥深さを味わっていただけたらと思います。
──『今夜、ぬか漬けスナックで』担当者より