田中ひかる『ナイチンゲールの風が吹く 大関和と近代看護の物語』

田中ひかる『ナイチンゲールの風が吹く 大関和と近代看護の物語』

朝ドラヒロインたちのひたむきな生き方を子どもたちに伝えたい


 連続テレビ小説(朝ドラ)『風、薫る』の放送が始まりました。

 明治時代、まだ病人やケガ人を看病する仕事が「いやしい」とされていた時代に、専門的な訓練を受けた「トレインド・ナース」(現在の看護師)となり、おおぜいの人々の命を救った2人の女性の物語です。

 2人には、実在したモチーフがいます。「大関おおぜきちか」と「鈴木すずきまさ」です。

 第1週から、「大関和」をモチーフとした主人公「りん」(演者は見上愛さん)が暮らす平和な村でコレラがはやりはじめ、父親(演者は北村一輝さん)が感染死するという深刻な状況が描かれました。

 情報が少ないなかでの感染症に対する不安や恐怖、患者の隔離、その家族に対する理不尽な差別、悲しい別れなど、〝コロナ禍〟を彷彿とさせました。

 実はドラマの原案となった拙著『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)は、〝コロナ禍〟の看護師さんたちの奮闘をきっかけに、書き始めたものです。

 仕事とはいえ、感染の危機にさらされながら、なぜこんなに頑張れるのだろう?という思いから、日本の看護の歴史について調べはじめ、その過程で一葉の写真に出合いました。

 制服にエプロンをつけた7人の女性がやさしげなまなざしをレンズに向けています。

 それはある看護学校の修了式に撮られた写真で、そこに写る大関和、鈴木雅をはじめとする女性たちそれぞれに、ドラマチックな人生がありました。

 助け合い、ときにぶつかり合いながら、次々と困難を乗り越えていく和や雅たちの爽快な人生を1冊にまとめ、朝ドラ化も決まったあとで感じたのは、彼女たちの友情、優しさ、強い意志、努力する姿、理不尽と戦う姿、道を切り拓いていく姿は、子どもたちにこそ伝えたいということでした。

 その願いが叶い、私の思い入れがいっぱいの『ナイチンゲールの風が吹く 大関和と近代看護の物語』を刊行することができました。

 この本をとおして、人生には困難や辛いこともあるけれど、生きるに値するということを子どもたちに伝えたいです。子どもたちが未来へ向けて一歩を踏み出す勇気につながればうれしいです。

  


田中ひかる(たなか・ひかる)
1970年東京都生まれ。作家・歴史社会学者。博士(学術)。女性に関するテーマを中心に、執筆・講演活動を行っている。著書に、NHKの朝の連続テレビ小説『風、薫る』原案となった『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)のほか、『明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語』(同上)、『生理用品の社会史』(KADOKAWA)などがある。

【好評発売中】

ナイチンゲールの風が吹く 大関和と近代看護の物語

『ナイチンゲールの風が吹く 大関和と近代看護の物語
著/田中ひかる

ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年2月後半★
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