ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年4月後半★

ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記2026年4月後半

 4月11日 

 
 ネイルサロンで「引っ越し作業ができる爪にしてください」というオーダーに応じてもらった。パーツなし、長さなし、高さありでぷっくりの中に星が浮かんでいる。この爪でダンボールと家具に立ち向かう。

 
 面白いは切ない。まだあまり知られていないこと。サブリナ・カーペンターのステージを見ていて、ああ、この人が主演の『WICKED』が見てみたかったと思った。サブリナは切ない。サブリナにはもっともっとどんどんどんどん信じられないほど派手で華美な舞台装置で大胆なパフォーマンスをしてほしい。彼女には『ブラック・スワンズ』の著者イヴ・バビッツのような消費社会の移りゆく都市の輝きの中の切なさがある。『ブラック・スワンズ』は一番面白い女友達の、話が感情的にそれてゆくエピソードトークを聞いているような幸せな書籍で、去年読んだ小説集で1番面白かった。口が悪いって思われるくらいのユーモアがあって、でも、ピュアで。イヴ・バビッツの遺した文章は出来る限り読みたい。

 4月12日 

 
『かもめ食堂』のリバイバル上映初日にご招待いただき出席。これは『ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋』と二本立てで上映すべきだと確信した。どちらも若くない女性が集まって飲食店をやる話である。前者は自然派シスターフッド、後者は大麻派シスターフッド。早稲田松竹さん、どうでしょうか。

 4月13日 

 1回行けたらその場所は自分にとって行きやすい、近い場所になるのだ。いつも上映情報をチェックするだけだった映画館に山崎まどかさんと行った。邦画専門の名画座、ラピュタ阿佐ヶ谷。特集上映は「松竹女性映画珠玉選 女優王国の底力 戦後篇」。観たのは中村登監督・岡田茉莉子主演の『河口』と成澤昌茂監督・瑳峨三智子主演の『裸体』の二本で、『河口』がすさまじく面白かったのでメモ。

 
メロドラマ(とは……階級差、過酷な運命、すれ違いなどの複雑な人間関係や物語を単純な二項対立で図式化し、誇張された過剰な演出で観客の感情を揺さぶろうとする、みたいな劇映画を指す。)を思わせるポスターだがそんなペーソスはなく、あらすじを追えば白川李枝(岡田茉莉子)が日本初の女画商になる話だとか書いてあるけど、彼女には美術の知識もお金への大欲もない。情念ない。ビジネスパートナーである美術オタクのおじ、館林(山村聰)とのバディコメディのような作品だった。

実家を出てジジイの妾として3年過ごしてそこを離れ、ジジイの美術顧問だった館林という人物に勧められてなぜか画商になる。30歳くらい。資金繰りに困れば社長系おじと肉体的な取引もするが、金銭とは関係のない愛も知ってうまくいかなくて……話は転がっていく。かっこつかないけどずっと服はオシャレだ。森英恵らしい。

岡田茉莉子の台詞はずっと揺れ動く乙女心の垂れ流しで、気まぐれプリンセスでもあり、愛の手切れ金が安いと冷めるプライドもあり、すっとぼけていて噓もつくけど不器用で、悪女じゃなくて破滅もしない。何を考えているのか、ずっとわかる。素直な女性だ。ただし、思ったことをそのまま言えるような相手は館林だけで、あの台本と台詞回しが成立しているのは館林が李枝と一ミリも男女の関係にならない(エロい空気ぜんぜん流さない)おかげである。だって、考えてみれば、実家を飛び出し資産家の妾になっていた李枝には女友達の一人もいない(少なくとも登場しない)。前半ではモノローグで多く語られた宛先のない心情吐露もだんだん減って、最後には館林に打ち明けている。なのに、李枝と館林の関係性がまっったくエモくないというのが、痺れたね。中村登。映画には描かれてないけど館林って女兄弟がいるんじゃないかな。じゃないと茉莉子の行動や発言にはもっと狼狽えるか辟易とするはずだよ。

上映の機会が少なくなかなか誰も観ないと思うのでネタバレする。クライマックス、李枝が思いを寄せかけた既婚者との旅行を諦めることではじめて自分の恋心を知る。李枝は切なくて悲しくどうしようもない。仕方なく美術オークション参加中の館林に電話すると、李枝が涙止まらなくなって、こんな切ない気持ちに比べればお金なんて何の価値もないのよ、と判断力が低下……というか加速?していく。電話越しの館林の「佐伯祐三の絵、買っていい?」に対し、そんなに店の金はないのに「いいわよ」と返し、嬉しくなった館林がさらに「ゴッホ、買ってもいいか!?」と聞いても「いいわお店を抵当に入れればいいわそんなの」とか言ってヤケクソになっていく。わかるよ、心より大きなものは、ないよね。このシーンが本当に面白すぎて私は感動した。

電話を切った後、画面上では乗らなかった列車がとうに過ぎた大阪の駅前を岡田茉莉子がとぼとぼと歩く裏で、音声だけは館林のオークション会場の盛り上がりが流されている。どんどん入札金額が上がっていく白熱の音声と、喪失感と虚無感に苛まれて歩くだけの、茉莉子。好きだった頃の中島哲也みたい(褒め言葉)。この人の状態を笑ったっていいけれど、バカにしてるわけじゃないみたいな、監督と主人公が取る距離感も絶妙だった。滑稽な涙で笑えてしまう感じも、何映画なのかわからない感じも含めて日本版『マーティ・シュプリーム』ではないかと思った。

映画内を通して茉莉子の歩く姿、歩きたがる姿はどれも魅力的で、歩いて河口に辿り着いて終わるラストショットもすごい。もう一度見る機会があるならば注目すべきアイテムは電話、鍵となる動作は歩行、あと銀座の撮り方とかかな。


 一本目に『河口』を観て、二本目の『裸体』を観るまでの間に、まどかさんと少し歩いてジェラートを食べに行こうとしていたけど、『河口』語りをしてたら道を間違えたりして、なぜか大人二人で急いでジェラートを食べたのが、楽しかった。そして二本目にも間に合った。映画のあと本当はゆっくりお茶がしたかったけど、私はやることありすぎて優先順位わかんなくなったから逆に映画二本観ちゃえ!の日だった(碌でもない)。良い映画を観てやる気を出して、お茶欲に負けず、仕事をしに帰宅した。

 4月14日 

 
 私が愛していた雑誌『MARQUEE』のMEG掲載記事をまとめた『MEG FILES』というアーティストブックの中にある、小林武史によるMEGについてのコメントが数式だった。「無防備×ビジネス×女=すみにおけない感じ、MEG。」とのこと。

 4月15日 

 
 男の子のアイドルを見るたび、この人たちは女友達を作れないのだと、切なく思う。

 
 かわいくて時々見ているアイドルの男の子が自分が昔撮ったような写真を載せていたので、あの扉が開いてしまった。私には彼を無視しない義務があり、感情移入する権利がある。少し前には、服を選んで着る企画で彼は自分でフェミニンなコーディネートを組んでいた。かっこいい。私が飽きるほどに観た映画群を思い出さずにはいられなかった。ヘアメイクはそれ用には整えたりせず、服だけなのが、足りてなくて、大事。

 

 ある種の青春映画には必ず女友達の家でファッションショーをするシーンがあり、盛り上がってそのまま二人で街へ出掛けてみるのだが、翌週にはクラスで嫌な噂を流されて笑われる。好きかもしれない友達も人前では自分のことを守ってくれない。休みがちになった主人公と、女友達と、好きかもしれない友達は三人で平日に学校をサボり、田舎から少し離れ都会まで、鈍行で向かう。この場合の都会っていうのは、宇治から梅田に行くみたいな。なんか、川崎に行くみたいな都会。大好きなゆっきゅんのフリーライブにでも行く。無銭エリアじゃよく見えないし、サイン会行く金もないけど、『プライベート・スーパースター』のリクエストが届いて嬉しかった。

 
 オシャレしたつもりでもTシャツが可愛いだけで汚れたスニーカーはダサくて、どっかに行っても何も解決した気分にはならなくて、晩ご飯のお金もなくて、夜と大人はやっぱり怖くて、三人はふがいなく地元に帰るしかない。女友達が少し泣く。

 何かが変わると思ったけど、何かが変わると思っただけ。

 終点まで寝てしまう帰りの電車では、三人で手を李枝繫いでいる。

 三人はこの日のことをずっと覚えている。

 
 私はMステで彼と共演する。15歳のファンなんて珍しかったから覚えている。

「スーパースターになったんだね」と彼に言う。

 4月17日 

 
 借りたチャージスポットの裏側をよく見たら四流北斎漫画みたいなイラストが印刷されていて最悪の気分になった。他にもイラストの種類はあったみたいだが、八種類どれも可愛くない、嫌なデザインだった。渋谷再開発っぽいセンスを感じる。うまく言えないが、行政が好みそうな〝アート〟の絵柄には共通点がある。本気のメセナを見せやがれ。アイラブメセナ。

 4月18日 

 
 母親が東京に来ていて、今週もサブリナ・カーペンターのコーチェラの出番を流していたら、マドンナがシークレットゲストとして登場した。母は「マドンナは、同い年よ」と言った。母はサブリナ・カーペンターと一緒に曲を出したりはしない。足腰も歯も弱くなってきて、ゆっくり歩いて、日高屋で食べられるものも限られてきて天津飯ならいけるかなってくらいがマドンナと同い年の通常の状態なのだ。マドンナがしゃがんでから淀みなく立ち上がる姿に感動した。あとでLINEが来て、母親とマドンナは同い年ではなかったと発覚した。なんだそれは。父親とマドンナが同い年らしい。そっちの同い年は、大してかけがえなくないなと思った。

 4月19日 

 
 昨日のコーチェラについて考えていた。サブリナとマドンナ、二人は踊っていなかったし二人のステージにはダンサーがいなかった。二人はただ、歩いていた。DIVAとは歩行なのだ。これは一昨年デュア・リパのライブで実感し、去年aespaのライブでその完成を見たことだけど、さらに確信した。DIVAに必要なことは堂々とした歩行だ。踊らなくてもよい。花道は使えば使うほど素晴らしいが、ランウェイとかでもない。歩行こそがDIVAの本懐を見せつける時間であり、後ろから前に歩いてくることで、それだけで自分が誰なのかを相手に伝え、黙らせたり叫ばせたりできる。

 
 だから私は自分のお客さんには、ライブの後の駅までの道のりを、最寄駅から家までの道のりをとにかく堂々と歩けるようにして帰らせたい。往路がどれほど情けないものでも、大人なのに全力で走っていても、おにぎり頰張っていても構わない。帰り道で、それぞれの人生へと歩かせる。それが今、私のやりたいことだと、わかった。4月19日15時03分。

 
 いつも行方不明だった友達に3年ぶりに会って台湾料理。「ラグ」の話をしたら「私はラグに狂って、もうモロッコのベルベル村まで行くしかないってとこまできて、買うこと自体を放棄したよ」と言われて、レベルが違った。やっぱりラグは、狂わないと買えないんだ。

 
 また遊ぼうね。

 4月20日 

 
 恥ずかしがらずに努力して顔かっこよく生きることを決意した朝。

 
 夜の表参道。現状を変えたいけど思考を少し放棄してしまっていた友達が変な事務所に入りかけていた。契約書を私が全て読み上げて、問題のある箇所をいくつか指摘した。私ならこう変えてもらうように交渉するとか。バイトをしすぎて考える暇がなくなってるのはわかる。でもいつも心配になる。他の方法を力説して提案し、契約は止めさせた。友情の場面としてこういうことはよくある。マレーシア料理は美味しかったけど、名前を思い出せない。

 4月22日 

 
 1ヶ月できなかったのに、1時間で作詞ができた。WALKってタイトルは地味かな?

 4月23日 

 
 神保町シアターで『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん』。老人ホームを抜け出してきた女性と、息子夫婦とうまくいってない女性が浅草で出会う話。どう考えても好みのシナリオだが、変なところで寝てしまった。

 4月24日 

 
 もうすぐフリマをするけど、フリマの前に、着る人を選ぶオシャレすぎる服などをSAKA-SAMAのえりこに譲りたくて家まで来てもらった。IKEAのバッグが二つパンパンになるくらい、服を持って帰ってくれた。「こんなにもらっていいのかなって思うかもしれないけど、私はむかし東佳苗さんに、こんなにもらっていいのかなってくらい服をもらったことがある。今でも着ている。だから、いいのだよ」と言った。貰ってくれて本当にありがたい。かわいく着てくれるんだろう。

 4月25日 

 
 Perfumeの新作ドキュメンタリー映画を見たら勇気が湧いてきて、夥しい数のサブスク(なくてもいい)を解約することができた。店舗にも出向いてジム(行ってない)の解約さえできた。AIに一年間でどれだけ損してたか聞いたら19万円と言われた。泣きますよ。

 4月26日 

 
 久しぶりに本当の初ソロ曲『消滅・ときめいて』を歌った。

 4月27日 

 
 部屋を眺めていて、自分の人生はずっとビフォーで、アフターが訪れたことがないと思う。今日は不用品回収業者がきて、本棚や椅子やテレビを挟んでいたマットレスなどあらゆるものを回収してもらった。その場で査定されて金額が決まるの怖いしくみだよ。五万。

 
 本棚を移動させた床に、キャンメイクのマシュマロフィニッシュパウダーの粉が散らばっている。お前、いつからだよ。マシュマロフィニッシュパウダーの跡からは哀愁が聴こえる。やっぱり俺の生活の人格はロックじゃなくてフォークでブルースだなと思い知った。

 4月28日 

 
 朝は引っ越しをして夜はTWICEを見た。

 
 国立競技場の高く遠い席で、俺は今日ここに引っ越したのだと思った。

 4月30日 

 
 君島くんの家で二人きりで新曲『WALK』のレコーディング。

 
 こんな時間があるから生きていけるんだよ。ありがとう。

(次回は7月9日に公開予定です)

 


ゆっきゅん
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『OVER THE AURORA』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。
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