スピリチュアル探偵 第2回
懐かしの「マーフィーの法則」に、 探すのをやめるとそれは見つかる、という有名な一節があります。
これは本当に言い得て妙で、たとえばコンビニやガソリンスタンドなど、必要なときにかぎってなかなか見つからないというのは、いかにもありがちなこと。実は、僕が長年取り組んでいる霊能者探しにも、同じことが言えます。
日頃から周囲に「占い師ではなく霊能者を探しています」と聞いてまわり、情報収集に努めている僕ですが、「どこそこにこんなスゴい人がいるよ」とか、「昔こんな人に視てもらったことがある」などと、次々にネタが持ち寄られることもあれば、まったくの梨のつぶてということだって珍しくありません。
もう何年も前の話になりますが、その頃の僕は、不発続き(つまりインチキばかり)ですっかり腐っていました。評判倒れのお粗末な手口が立て続き、かといってネタになるほどエキセントリックでもない霊能者ばかり。こうなると毎回2万~3万円の鑑定料が惜しくなり、「もう、こんな活動辞めてしまおうかな」とすら思い始めていました。
そんなある日、友人から誘われて何の気なしに飲み会に顔を出したら──いたんです。「私、視えちゃうんですよ」とのたまう御仁が。
今回ご紹介するのは、関西在住のある女性霊能者のお話です。
〈CASE.2〉関西で暗躍する"夜の蝶"と飲んでみたら……
その日、僕は大阪で取材案件があり、朝一番で新幹線に乗り込みました。そして簡単なインタビューを1本終えて、昼過ぎには早くも自由の身に。いつもならすぐ都内にUターンするところですが、この日は久しぶりに関西在住の友人A君と飲み明かそうと、梅田駅付近の安ホテルを押さえていました。
すると日没後、仕事を終えたA君から思いがけないメールが。
「ごめん、他にも友達を何人か呼んでいい?」
「別に構わないけど」
「よかった! じゃあ19時にお店を予約してるから、直接来て!」
ほうほう、妙に手際がよろしいですな。そんな若干の違和感を飲み込みながら指定の居酒屋へ行ってみると、8人用の個室に通されまして、そこには妙齢の男女がちらほらと着席していました。
そういえばこの日は金曜日。要はコイツ、僕との約束を忘れて、うっかり合コンをダブルブッキングしていたわけです。直前で気づいたA君は、わざわざ東京からやって来た僕を切るわけにもいかず、「だったらメンツに入れてしまえ」と迷采配をふるったのでしょう。
おかげで8人テーブルに9人詰め込むはめになって窮屈だし、男女比が5対4と歪になるし、既存のメンバーにとって僕は迷惑この上ない存在だったに違いありません。
とはいえ、ここまで来て「帰ります」とも言えず。成り行きながら大阪・夜の陣が幕を開けたのでした。
友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。