ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第79回
話し合いが苦手だ。
これは、作家というより
知的生命体にとって致命的である。
前回「2週間後確定申告がどうなっているか乞うご期待」と、エッセイに引き、という禁じ手をいとも容易く使ったわけだが、まず2週間経ってしまったことに驚きである。
作家は常に「締め切りがくるはずがない」という揺るぎなき信念を持った生き物なのだ。
この強い精神力があるからこそ「締め切り前日に白紙」という常人なら正気を失うか、大急ぎで仕事をしてしまう局面でも落ち着いて Twitter を開くことができるのだ。
よって確定申告に対しても「期日がくるはずがない」と確信していたのだが、不思議なことにいつも締め切りがやってくる。まだ信心が足りないのかもしれない。
それで結局確定申告はどうなったかというと「俺たちの確定申告はまだ始まったばかりだ」と言いたいところだが、ちゃんと税理士に提出したし、何だったら2月中にできていた。
この、ここぞという大一番で読者の期待に全く応えないところが私が作家として大成しない原因な気がしてならない。
実際「見せ場が苦手」という致命的弱点を持つ作家はいる。
ここでコイツにあざといぐらいの感動的なセリフを言わせれば読者は吐くほど泣く、とわかっているにもかかわらず「無言で立ち去る」など、わかる奴にだけわかる、わからない奴には何一つ伝わらないスカした表現にしてしまったりするのだ。
脳内の妄想をわざわざ絵にして不特定多数に見せている時点で相当な恥晒しにもかかわらず、何故か一番大事なところで急に照れ始める。全裸にトレンチコートを羽織って外に出たまでは良いが、いざJKの前に立つと恥ずかしくてコートを開けない低レベルな露出狂みたいになってしまうのだ。